単純な有機化合物の19 F NMRスペクトルの例。それぞれのピークの下に積分値が示されている。
1-ブロモ-3,4,5-トリフルオロベンゼンの19 F NMRスペクトル。拡大図はパラ位フッ素の2つのメタ位フッ素および2つのオルソ位プロトン核へのカップリングから生じるスピン-スピンカップリング パターンを示している。
フッ素19核磁気共鳴 (フッそ19かくじききょうめい、19 F NMR)は、フッ素 を含む化合物の同定に使われる分析技術である。 19 FはNMR分光法 のための最も重要な核種の一つである[ 1] 。
操作の詳細
19 F は1/2の核スピン と高い磁気回転比 を持つ。これは、この同位体 がNMR測定に高応答性であることを意味する。そのうえ、19 Fは天然に存在するフッ素の100%を占める。フッ素以外にモノアイソトピック (またはそれに近い)でスピン1/2の高感度なNMR活性核は1 H と31 Pだけである[ 2] [ 注釈 1] 。
その好都合な性質と高い存在量のため、19 F NMRは非常に速く、1 H NMR 分光法に匹敵する。実際、19 F核は3 H 核と1 H核に次いで3番目に高感度な(磁気回転比が高い)NMR核である(磁気回転比: 3 H, 45.41; 1 H, 42.58; 19 F, 40.05; 単位はMHz T−1 )。
フッ素の化合物の化学シフト。
19 F NMRの化学シフト の範囲は非常に広く、およそ550から−250 ppmの範囲にあるが、有機フッ素化合物から生じる通常遭遇するシグナルはおよそ−50から−70 ppm(CF3 基)、−200から−220 ppm(CH2 F基)にある。非常に広いスペクトル範囲は、低いデータ分解能や不正確な積分といったスペクトルを記録するうえでの問題を引き起こす。
19 Fについての基準化合物はCFCl3 である[ 3] 。しかし、過去にはCF3 COOH (CFCl3 を基準にして−76 ppm)、C6 F6 (CFCl3 を基準にして−163 ppm)を含む多くの化合物が使われた。また、デカップリングした19 F{1 H}および1 H{19 F}スペクトル、多結合相関の19 F-13 C HMBC 、空間を介した相関のHOESY スペクトルを記録することも可能である。
応用
通常、19 F NMR分光法は有機フッ素化合物 の構造を解析するために使われる。この手法の代表的な標的はC-F結合を含む多くの医薬品である。この技術はフッ素化物塩を分析するためにも使われる[ 4] 。
脚注
出典
^ H. Friebolin "Basic One- and Two-Dimensional NMR Spectroscopy", Wiley-VCH, Weinheim, 2011. ISBN 978-3-527-32782-9
^ See Harris, Robin Kingsley and Mann, Brian E.; NMR and the periodic table , p. 13 ISBN 0123276500
^ Roy Hoffman (2007年). “19 Fluorine NMR ”. ヘブライ大学 . 2018年1月29日 閲覧。
^ Gerken, M; Boatz, J.A; Kornath, A; Haiges, R; Schneider, S; Schroer, T; Christe, K.O (2002). “The NMR shifts are not a measure for the nakedness of the fluoride anion”. J. Fluor. Chem. 116 (1): 49–58. doi :10.1016/S0022-1139(02)00101-X .
関連項目