数学において二次空間(X, q)(すなわち二次形式q を備えたベクトル空間X)のヌルベクトル (null vector) または等方ベクトル(とうほうベクトル、英: isotropic vector)とは、q(x) = 0 を満たす非零元 x ∈ X を言う。
実二次形式の理論において、定符号二次形式と等方二次形式は相異なる(両者の違いは後者には非零ヌルベクトルが存在するという点だけである)。そのようなベクトルが取れるとき、二次空間 (X, q) は擬ユークリッド空間(英語版)と呼ばれる。擬ユークリッドなベクトル空間 X は、(一意とは限らない)互いに直交する部分空間 A, B を用いて X = A + B と分解して、二次形式 q が A 上正定値かつ B 上負定値となるようにすることができる。X のヌル円錐または等方錐は均衡球面の合併 からなる。この錐は原点を通る等方直線(英語版)すべての合併でもある。