JR四国1000形気動車 |
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JR四国1000形気動車 (2021年12月 佐川 - 襟野々) |
基本情報 |
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運用者 |
四国旅客鉄道 |
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製造所 |
新潟鐵工所 |
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製造年 |
1990年 - 1997年 |
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製造数 |
56両 |
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運用開始 |
1990年3月10日 |
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主要諸元 |
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軌間 |
1,067 mm |
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最高運転速度 |
110 km/h |
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設計最高速度 |
110 km/h[2] |
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車両定員 |
151人(座席70人) トイレ付きは143人[3] |
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自重 |
31.5 t |
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全長 |
21,300 mm[1] |
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車体長 |
20,800 mm[1] |
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全幅 |
2,894 mm[1] |
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車体幅 |
2,800 mm[1] |
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全高 |
3,825 mm[1] |
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車体高 |
3,600 mm[1] |
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床面高さ |
1,180 mm[1] |
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車体 |
ステンレス[4] |
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台車 |
S-DT57(動力軸)、S-TR57(付随軸) |
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車輪径 |
860 mm[1] |
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固定軸距 |
2,100 mm[1] |
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台車中心間距離 |
14,400 mm[1] |
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動力伝達方式 |
液体式 |
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機関 |
コマツ製SA6D125-H[3] × 1基 |
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機関出力 |
294 kW(400 PS) |
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変速機 |
DW-14改[3] |
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変速段 |
変速1段、直結2段[3] |
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制動装置 |
電気指令式ブレーキ[3] 機関・排気ブレーキ併用[3] |
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保安装置 |
ATS-SS |
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1000形気動車(1000がたきどうしゃ)は、四国旅客鉄道(JR四国)が1990年から製造した一般形気動車である[2]。
1500形気動車との併結対応改造車である1200形気動車(1200がたきどうしゃ)についても本稿にて記述する。
概要
JR四国域内の徳島・高知地区を主とする非電化区間の地域輸送改善用として設計された車両で、1990年(平成2年) - 1997年(平成9年)までに56両 (1001 - 1056) が新潟鐵工所で製造された[5]。
電化区間の存在しない上記2地区で使用してきた国鉄承継車両の老朽化による取替と運転時分短縮とを目的として計画され、冷房設置などの接客設備改善、大出力機関搭載による動力性能向上を企図した[2]。通勤通学輸送に対応した車体中央の両開き扉・ワンマン運転用の諸設備など、広汎な運用に対応する仕様を有する[4]。
運用開始当初より、徳島・高知地区で地域輸送に使用されている。2006年に後続形式の1500形気動車の運用開始に伴い、一部の車両に併結対応改造が施工され、1200形に形式を変更している。
仕様・構造
- 車体
- 全長21 m 級のステンレス製構体で、車体両端に運転台を設け、1両での運用が可能である。
- 客用扉は片側3か所に設ける。両端部は850mm幅の片開き扉、中央部は1300mm幅の両開き扉である[注 1][4][3]。ラッシュ時運用と閑散時のワンマン運用とを両立させるための扉配置で、ワンマン運転時には中央扉を締切扱とする[4]。
- 客室窓は上下2段式で、両開き扉の戸袋部と片開き扉の戸袋隣接部に固定窓を設ける。
- 乗降口は床面高さを1180mmまで下げ、ステップを廃止した平床構造とされた[4]。乗降の円滑化・利便性に配慮した仕様であるが、使用線区では駅ホームと乗降口の高さが法令規定値に適合しないため、駅ホーム高さを920mmまで嵩上げ[注 2]して法令適状としている[4]。ホーム嵩上未施工区間(予讃線の伊予市駅以西など)では営業運転ができない。嵩上後のホーム高さは従来のステップ装備車に合わせられ、本形式の乗降口との段差は残存する。
- 冷房装置は屋根上に集中式のAU26形を2基設置する。冷房駆動は専用機関 (42PS) を1基搭載し、かつ、走行用機関を併用する方式である[3]。
- 駆動系
- 駆動機関はコマツ製の直列6気筒ディーゼル機関 (SA6D125-H) を用いる[3]。これは2000系気動車に使用した機関と同系のもので、過給機・燃料噴射系の仕様を変更し、400PS/2100rpmの定格出力を有する[4]。液体変速機は逆転機を内蔵したDW14改で、本形式での仕様は変速1段・直結2段の自動切換方式である[3]。
- これら駆動系の一新と車体の軽量化により、最高速度は110km/h、勾配均衡速度は52km/h (25 ‰) に向上[注 3]した[2][3]。
- 台車・ブレーキ装置
- 台車は枕バネに空気バネを用いたボルスタレス台車S-DT57形(動力台車)S-TR57形(付随台車)で、コイルバネの軸バネと軸箱前後に設けた緩衝ゴムとで軸箱を支持する。動力台車は2軸とも駆動軸としている。
- ブレーキ装置は応答速度や信頼性向上を企図し、電気指令式空気ブレーキを搭載する[3]。従来型の自動空気ブレーキを装備するキハ58系やキハ40系などとの混結は考慮されず、非常時の救援には主要駅備付のD救援ブレーキ装置を用いる仕様である[3]。D救援ブレーキは車両には搭載せず、主要駅に設置する方式とした[3]。
- 下り勾配の抑速用として、機関ブレーキ・排気ブレーキを併設する[3]。
- 室内設備
- 座席は都市近郊でのラッシュ時輸送と郊外の路線での運用を考慮し、クロスシートとロングシートを点対称に配置[注 1]する[4]。車内中央向かって左側がクロスシート、右側がロングシートの配置である[4]。灰皿は当初から設置しない。
- その他設備
- ワンマン運転に対応するため、運賃箱・運賃表示器・整理券発行器が搭載されている[4]。ワンマン運転時は後乗り前降りで運用される[4]。
- 土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線用の9640形が本形式と併結が可能な仕様で製造され、同線との直通運用にも用いられる。
製造時期別詳説
- 1990年に28両 (1001 - 1028) が製造され、徳島運転所に配置された[5]。
- 1992年に20両 (1029 - 1048) が製造された[5]。
- 徳島地区・高知地区の輸送改善用として製造された車両で、1029-1032が徳島運転所に[5]、1033-1048が高知運転所に配置された[5]。高知地区では土讃線のワンマン運転区間拡大に充てられた。
- 燃料切れ防止策として、運転室に燃料警告灯・点検スイッチを追設したほか[6]、腰掛配置の変更や[6]、運転室侵入防止設備が設置された[7]。
- 1995年に2両 (1049、1050) が製造され、徳島運転所に配置された[5]。
- 徳島地区輸送改善用として製作された車両で、2008年に2両とも1200形 (1249、1250) に改造された[5]。
- 1997年に6両 (1051 - 1056) が製造され、徳島運転所に配置された[5]。
- 車掌スペース用の仕切の設置や[8]、前面窓下のライトケーシングの固定位置変更[8]、無線アンテナのカバー取付[8]がなされた。
- 2006年に1両 (1056) が1200形 (1256) に先行改造され、2008年に残存5両も1200形に改造 (1251 - 1255) された[5]。
改造
- トイレ追加
- 落成時点ではトイレは設置しなかったが、2001年より1000形19両 (1001 - 1011・1034・1037 - 1043)と1200形全車を対象にバリアフリー対応の洋式トイレが設置された。最終的に、1000形のうち対象外であった車両も含めて全ての車両に、徳島・高知側の運転台の後部のクロスシート1区画を撤去してトイレを設置した。なお、トイレから出た乗客が他の乗客と目線が合うのを極力避けるために、トイレの反対側にあるロングシートのうち、1001・1002を除き、トイレの出入口に該当する部分のみ一人掛けクロスシートに変更している。
- 半自動扉の利便性改善のため、客用扉をボタン開閉式とする改造が2007年度(平成19年度)から実施されている。徳島運転所所属車は全車2007年度に施工され、2008年度には高知運転所所属車の全車に施工された。
- 1500形気動車併結対応(1200形)
- 本形式の後続として地域輸送用に製造された1500形気動車との併結運用に対応させる改造である。改造後は車両番号を「原番+200」の付番基準で変更し、1200形に形式変更された。
- 連結器を電気連結器併設の密着連結器に交換し、客用扉は「半自動扱い」の開閉をボタン式に変更し、扉の隣接部に開閉ボタンを設ける。
- 車体の配色は濃淡グリーンを基調とした、1500形と同一の意匠に変更された。駆動系の仕様変更はない。
- 2006年に徳島運転所配置の1両 (1256) に対して改造が施工され、2008年には1500形の新製にあわせて同所配置の17両に追加改造が施工された。施工対象はすべて2次車以降 (1029 - ) である。
- 2006年度改造車は、当初は前面窓周囲・黒色塗装境界部など正面の配色が異なっていたが、後に他の1200形と同様の配色に合わせられた。
車歴表
車両形式
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製造区分
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車両番号
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種車
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製造
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落成(配置)
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転属(配置)
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除籍(配置)
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備考
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1000形
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1次車
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1001
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新潟
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1990年1月12日(徳島)
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2007年12月(徳島→高知)
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1002
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2007年12月(徳島→高知)
2021年3月13日(高知→徳島)
2023年3月18日(徳島→高知)
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1003
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1004
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1005
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1006
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1007
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1008
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2016年3月26日(徳島→高知)
2018年3月17日(高知→徳島)
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1009
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2016年3月26日(徳島→高知)
2019年3月16日(高知→徳島)
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1010
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新潟
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1990年3月9日(徳島)
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2012年3月17日(徳島→高知)
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1011
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2012年3月17日(徳島→高知)
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1012
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2008年10月(徳島→高知)
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1013
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2008年10月(徳島→高知)
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1014
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2008年10月(徳島→高知)
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1015
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2008年10月(徳島→高知)
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1016
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2008年10月(徳島→高知)
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1017
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2006年9月(徳島→高知)
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1018
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2006年9月(徳島→高知)
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1019
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2006年9月(徳島→高知)
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1020
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2006年9月(徳島→高知)
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1021
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2006年6月(徳島→高知)
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1022
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2006年6月(徳島→高知)
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1023
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2006年6月(徳島→高知)
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1024
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2006年6月(徳島→高知)
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1025
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2006年6月(徳島→高知)
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1026
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2006年6月(徳島→高知)
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1027
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2006年6月(徳島→高知)
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1028
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2006年6月(徳島→高知)
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2次車
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1029
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新潟
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1992年2月4日(徳島)
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改番(1229)
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1030
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改番(1230)
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1031
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改番(1231)
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1032
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改番(1232)
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1033
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新潟
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1992年2月4日(高知)
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1034
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1035
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2007年12月(高知→徳島)
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改番(1235)
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1036
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新潟
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1992年2月24日(高知)
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1037
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1038
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1039
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1040
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1041
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1042
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新潟
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1992年3月2日(高知)
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1043
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1044
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2006年9月(高知→徳島)
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改番(1244)
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1045
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2007年12月(高知→徳島)
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改番(1245)
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1046
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2006年9月(高知→徳島)
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改番(1246)
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1047
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2006年9月(高知→徳島)
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改番(1247)
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1048
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2006年9月(高知→徳島)
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改番(1248)
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3次車
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1049
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新潟
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1995年3月25日(徳島)
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改番(1249)
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1050
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改番(1250)
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4次車
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1051
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新潟
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1997年3月19日(徳島)
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改番(1251)
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1052
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改番(1252)
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1053
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改番(1253)
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1054
|
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改番(1254)
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1055
|
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改番(1255)
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1056
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改番(1256)
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1200形
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2次車
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1229
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1029
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多度津
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2008年8月2日(徳島)
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1230
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1030
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2008年8月2日(徳島)
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1231
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1031
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2008年6月4日(徳島)
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1232
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1032
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2008年9月5日(徳島)
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1235
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1033
|
2008年9月5日(徳島)
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|
1244
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1044
|
2008年10月4日(徳島)
|
|
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1245
|
1045
|
2008年9月5日(徳島)
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|
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|
1246
|
1046
|
2008年7月5日(徳島)
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|
|
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1247
|
1047
|
2008年7月5日(徳島)
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|
1248
|
1048
|
2008年8月2日(徳島)
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|
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3次車
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1249
|
1049
|
2008年7月5日(徳島)
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1250
|
1050
|
2008年6月4日(徳島)
|
|
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|
4次車
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1251
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1051
|
2008年10月4日(徳島)
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1252
|
1052
|
2008年6月4日(徳島)
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|
1253
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1053
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2008年10月18日(徳島)
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1254
|
1054
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2008年9月6日(徳島)
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1255
|
1055
|
2008年7月5日(徳島)
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1256
|
1056
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2006年6月1日(徳島)
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運用・現況
徳島運転所・高知運転所に配置され、以下の区間で運用されている。
- 高松・徳島地区
- 高知地区
高知地区ではトイレ設置の有無で運用が分かれていたが、トイレが全車に設置された現在は共通運用となっている。
高知地区の運用は高知以西中心の運用であったが、徳島地区への1500形配置に伴って2006年(平成18年)6月1日・2008年(平成20年)10月15日に合計13両が高知運転所に転配され、後免 - 土佐山田間の運用が増加している。2016年3月26日のダイヤ改正以降、須崎 - 窪川の普通列車は全列車1000形に統一された。
土讃線のホームかさ上げ工事の完成に伴い、2011年3月12日のダイヤ改正より、琴平 - 佃・阿波池田 - 土佐山田間でも運用が開始された[9]。
牟岐線の阿南駅以南では2008年度 - 2009年度に嵩上げ工事が行われ、2010年3月13日より運用を開始した。2008年に一時期、阿南駅 - 桑野駅でも使用されていたが、当時は阿波橘駅のホームが嵩上げされていなかったため、通過とする措置を取っていた。また、鳴門線でも2010年度にホームの嵩上げ工事を行い、2011年3月12日から運用が開始された[9]。
2012年3月17日のダイヤ改正では、徳島運転所から1010・1011の2両が高知運転所に転属している。
高知配置車の2次車以降と徳島配置車の一部の車両には「アンパンマン」のキャラクターステッカーが前面に貼付されていたが、後に剥がされている。
2016年3月26日のダイヤ改正において、徳島運転所から1008・1009の2両が高知運転所に転属している。また、土佐山田以北の国鉄型がすべて置き換えられた。
2018年3月17日のダイヤ改正において、1008が再度徳島運転所に転属している。これにより徳島線から国鉄型運用が消滅した。
2019年3月に1009が、2021年3月に1002が高知運転所から徳島運転所に転属している。
サンライズ瀬戸が琴平まで延長運転を行う場合、電力容量の問題から1200形が高松 - 琴平で運用されることがある。
2022年11月27日より、1200形気動車の1両が阿佐海岸鉄道DMV(デュアル・モード・ビークル)をデザインしたラッピング車両となり、約1年間の期間限定で高徳線・牟岐線・徳島線・鳴門線で運行を開始した[10][11][12]。
2023年3月18日のダイヤ改正において、徳島運転所から1002が再度高知運転所に転属している。これにより、土讃線土佐山田 - 高知と伊野 - 須崎から国鉄型車両の運用(定期列車に限る)が消滅した。(土佐一宮 - 高知については高知運転所までの回送列車が平日のみ運転されている。)
脚注
注釈
- ^ a b JR四国では同様の配置を7000系電車にも採用した。
- ^ 2000系特急形気動車導入の際にも、ホーム高さが低い停車駅では嵩上げ工事がなされた。
- ^ キハ40形の場合、同一条件での最高速度は95km/h、勾配均衡速度は26km/hである[3]。
出典
参考文献
- 『鉄道ファン』通巻347号(1990年3月・交友社)
- 谷操「新車ガイド3 JR四国 徳島地区ローカル用車両 1000形」 pp. 63 - 65
- 電気車研究会 『鉄道ピクトリアル』
- 大北 元広 「JR四国 1200形」 2007年10月臨時増刊号 No.795 『鉄道車両年鑑 2007年版』 p96
- 西脇浩二「JR各社の新世代気動車の現況 JR四国1000形」『鉄道ファン』第593号、交友社、2010年9月、97- 101頁。
外部リンク