HD 4113 は、地球から見てちょうこくしつ座の方角に約140光年の位置にある連星系である。主星の周囲には1つの太陽系外惑星が公転していることが知られている。
連星系
大きさの比較
太陽
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HD 4113 A
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主星の HD 4113 A は太陽に似たG型主系列星で、質量と半径は共に太陽よりやや大きいが、有効温度は太陽よりもやや低い。金属量は太陽よりも富んでいる。HD 4113 A から約49秒角離れた位置には12.7等級[6]の赤色矮星 HD 4413 B が存在しており、2014年に公表された研究で HD 4113 A と同様の固有運動を持っていることから重力で束縛された伴星であることが確認された[8]。
2018年にはスペクトル分類が晩期T型とみられる褐色矮星の伴星 HD 4113 C が発見された。この褐色矮星の伴星は、超大型望遠鏡VLTによる直接観測にも成功している[4]。表面の温度は 500 - 600 K 程度とみられているが、このときに予測された質量(65.8+5.0
−4.4 木星質量)と直接観測で得られたスペクトルから考えられる表面の温度には大きな差が生じていることが指摘されている。仮に形成から約50億年が経過しているとすると、この質量では現在の表面の温度は 1,200 K 程度になっているはずであり、逆にこの温度になるようにするのであれば質量が 36 ± 5 木星質量に留まる必要がある。この差異を説明する為に、実は HD 4113 C 自体が木星半径程度の大きさと33木星質量ずつの質量を持つ2つの褐色矮星の連星系であるという可能性や、HD 4113 A から約 9 au 離れた軌道を約27年の周期で公転する別の伴星の存在により視線速度のデータに偏りが生じ、HD 4113 C の質量が過大評価された可能性が示されている[4]。2022年には、ヒッパルコス衛星とガイア衛星によるアストロメトリ観測のデータ分析から HD 4113 C の軌道傾斜角と真の質量が求められた[7]。この観測結果では、HD 4113 C の質量は約52木星質量とされ、以前の研究よりも質量と温度に生じている相違の差が緩和されることとなった[7]。
惑星系
2007年10月26日、Tamuzらによるドップラー分光法での観測によって、主星 HD 4113 A の周囲を公転する下限質量が木星の1.5倍の太陽系外惑星 HD 4113 b(または HD 4113 Ab)が発見された[5]。HD 4113 bはとても極端に歪んだ楕円軌道で公転しており、その軌道離心率は約0.9となっている。これは HD 20782 b や HD 80606 b などと並んで既知の太陽系外惑星の中でも特に極端な値である。力学シミュレーションにより、HD 4113 C との相互作用による古在メカニズムで最初は真円に近かった HD 4113 b の軌道がこれほど極端に歪んだ可能性が高いことが示されている[4]。
脚注
注釈
- ^ a b c d パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
- ^ a b 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “Result for HD 4113”. SIMBAD Astronomcial Database. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年9月18日閲覧。
- ^ a b Brown, A. G. A.; et al. (Gaia collaboration) (August 2018). "Gaia Data Release 2: Summary of the contents and survey properties". Astronomy & Astrophysics. 616. A1. arXiv:1804.09365. Bibcode:2018A&A...616A...1G. doi:10.1051/0004-6361/201833051。 Gaia DR2 record for this source at VizieR.
- ^ a b c d Aguilera-Gómez, Claudia; Ramírez, Iván; Chanamé, Julio (2018). “Lithium abundance patterns of late-F stars: an in-depth analysis of the lithium desert”. Astronomy and Astrophysics 614: 15. arXiv:1803.05922. Bibcode: 2018A&A...614A..55A. doi:10.1051/0004-6361/201732209. A55.
- ^ a b c d e f g h i j k l m Cheetham, A.; Ségransan, D.; Peretti, S. et al. (2018). “Direct imaging of an ultracool substellar companion to the exoplanet host star HD 4113 A”. Astronomy and Astrophysics 614: 19. arXiv:1712.05217. Bibcode: 2018A&A...614A..16C. doi:10.1051/0004-6361/201630136. A16.
- ^ a b Tamuz et al. (2008). “The CORALIE survey for southern extra-solar planets XV. Discovery of two eccentric planets orbiting HD 4113 and HD 156846”. Astronomy and Astrophysics 480: L33-L36. arXiv:0710.5028. doi:10.1051/0004-6361:20078737. http://www.aanda.org/articles/aa/full/2008/12/aa8737-07/aa8737-07.html.
- ^ a b c d e f g h i j k l “Result for HD 4113 B”. SIMBAD Astronomcial Database. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2022年9月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l Feng, Fabo; Butler, R. Paul; Vogt, Steven S. et al. (2022). “3D Selection of 167 Substellar Companions to Nearby Stars”. The Astrophysical Journal Supplement Series 262 (1): 27. arXiv:2208.12720. Bibcode: 2022ApJS..262...21F. doi:10.3847/1538-4365/ac7e57. 21.
- ^ Mugrauer, M.; Ginski, C.; Seeliger, M. (2014). “New wide stellar companions of exoplanet host stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 439 (1): 1063-1070. Bibcode: 2014MNRAS.439.1063M. doi:10.1093/mnras/stu044.
- ^ “HD 4113 b”. Extrasolar Planet's Catalogue. 京都大学. 2022年9月19日閲覧。
関連項目
外部リンク