HD 140283は固有運動が非常に大きいため、元々天の川銀河に属していた天体ではなく、天の川銀河に吸収された矮小銀河で誕生したものと考えられている[2]。
HD 140283は、鉄と水素の存在比 ([Fe/H]) で表される金属量が-2.40(太陽の約0.4%)と低い値を持つ低金属星である[3]。微量ながらも金属を含んでいるため、種族III(宇宙最初期のビッグバン原子核合成で生成される水素とヘリウムのみで構成され、金属を全く含んでいない)の恒星には該当せず[2]、種族II(既に別の恒星が超新星爆発を起こし、それによって生じた重元素で「汚染」されている)に分類される[2]。年齢は136億6000万年から152億6000万年と推定されている。これは不確かさが大きいものの、それまでで最も古い恒星であったHE 1523-0901の132億年[6]より古い。これはプランクの観測結果から推定される宇宙の年齢(137.99 ± 0.21億年)と矛盾する可能性がある[2][3]。また年齢ではなく時代で考えると、133億6000万年前の天体であるUDFj-39546284[7]や、133億年前の天体であるMACS0647-JD[8]と比べても古い。NASAは「メトシェラ星 (Methuselah star)」というあだ名で呼んでおり[2]、これは旧約聖書で最も長寿な人物であるメトシェラに因んでいる。
HD 140283の年齢は、恒星に含まれる金属量と表面温度の値からまず144億6000万年とされた。それのみでの不確かさは3億1000万年である。更にいくつかの値の不確かさを導入すると、年齢の不確かさは8億0000万年となった。不確かさの値が大きくなったのは、特に酸素量の不確かさに起因する[3]。これらの値は、2000年の段階で算出された「少なくとも140億年であり最大でも160億年」という年齢や[2][9]、2002年の段階で算出された「120億年から150億年」[3]という年齢よりも改善されている。
^ abcdKarovicova, I et al. (2018). “Accurate effective temperatures of the metal-poor benchmark stars HD 140283, HD 122563, and HD 103095 from CHARA interferometry”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters475 (1): L81-L85. arXiv:1801.03274. Bibcode: 2018MNRAS.475L..81K. doi:10.1093/mnrasl/sly010. ISSN1745-3925.
^VandenBerg, Don A. (2000). “Models for Old, Metal‐Poor Stars with Enhanced α‐Element Abundances. II. Their Implications for the Ages of the Galaxy’s Globular Clusters and Field Halo Stars”. The Astrophysical Journal Supplement Series129 (1): 315-352. Bibcode: 2000ApJS..129..315V. doi:10.1086/313404. ISSN0067-0049.