HD 118203 は、地球からおおぐま座の方向へ約300光年[注 1]離れた位置にある8等級の恒星である。2024年10月の時点で、周囲を公転する2個の太陽系外惑星が発見されている。G0V 型のスペクトル分類を持つG型主系列星であり[1]、質量は太陽の約1.2倍、半径は約2倍程度である。形成から約54億年が経過していると考えられ[6]、金属量が 0.27 と大きく、これは HD 118203 がヘリウムよりも重い重元素を太陽の約1.86倍も含んでいることを示している[3]。
惑星系
2004年から2005年にかけてジュネーブ天文台などで観測を行った研究チームによるドップラー分光法での主星の視線速度観測から、2005年に周囲を公転する太陽系外惑星 HD 118203 b の発見が公表された[7][8]。この惑星は木星の約2.1倍の質量を持ち、主星からわずか 0.07 au 離れた軌道を約6.1日の公転周期で公転しているホット・ジュピターである[7]。2020年に TESS による観測から、HD 118203 b が主星の手前を通過(トランジット)することが判明し、これにより木星よりやや大きい程度の半径を持つことが明らかになった[4]。2024年には、主星 HD 118203 が惑星 HD 118203 b の公転周期に近い周期でわずかに変光していることが判明し、両者の間には磁気的な相互作用が生じている可能性が示唆されている[3]。
また、2024年8月には主星の視線速度観測とヒッパルコス衛星およびガイア計画によるアストロメトリ(位置天文学)観測結果から、HD 118203 b のさらに外側を公転している大質量の惑星 HD 118203 c が発見された。HD 118203 c は木星の約11倍の質量を持ち、主星の周りを太陽系における木星の公転周期に近い約14年かけて公転している。HD 118203 bと同様に、HD 118203 c も地球に対してほぼ真横を向けた軌道面となっており、両者の惑星はほぼ同一平面上に並んでいるとみられている[9]。
名称
2019年、世界中の全ての国または地域に1つの系外惑星系を命名する機会を提供する「IAU100 Name ExoWorldsプロジェクト」において、HD 118203 と HD 118203b はラトビア共和国に割り当てられる系外惑星系となった[10]。このプロジェクトは、「国際天文学連合100周年事業」の一環として計画されたイベントの1つで、ラトビア国内での選考、国際天文学連合 (IAU) への提案を経て、太陽系外惑星とその母星に固有名が承認されるものであった[11]。2019年12月17日、IAUから最終結果が公表され、HD 118203は Liesma 、HD 118203 bは Staburags と命名された[2]。Liesma は、「炎」という意味で、ラトビアの詩人フリードリヒス・マールベルジスの詩 “Staburags un Liesma” の登場人物の名前でもある[2]。Staburags は、やはり “Staburags un Liesma” の登場人物の名前で、ラトビアの文学、歴史において象徴的な意味を持つ岩を示す言葉でもある[2]。
脚注
注釈
- ^ a b c パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
- ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t “HD 118203”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2024年10月13日閲覧。
- ^ a b c d “Approved names”. NameExoWorlds. IAU. 2019年12月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Castro-González, A.; Lillo-Box, J.; Correia, A. C. M. et al. (2024). “Signs of magnetic star-planet interactions in HD 118203. TESS detects stellar variability that matches the orbital period of a close-in eccentric Jupiter-sized companion”. Astronomy and Astrophysics 684: 19. arXiv:2401.17272. Bibcode: 2024A&A...684A.160C. doi:10.1051/0004-6361/202348722. A160.
- ^ a b c Pepper, Joshua; Kane, Stephen R.; Rodriguez, Joseph E. et al. (2020). “TESS Reveals HD 118203 b to be a Transiting Planet”. The Astronomical Journal 159 (6): 243. arXiv:1911.05150. Bibcode: 2020AJ....159..243P. doi:10.3847/1538-3881/ab84f2.
- ^ Luck, R. Earle (2017). “Abundances in the Local Region II: F, G, and K Dwarfs and Subgiants”. The Astronomical Journal 153 (1): 19. arXiv:1611.02897. Bibcode: 2017AJ....153...21L. doi:10.3847/1538-3881/153/1/21. 21.
- ^ a b Bonfanti, A.; Ortolani, S.; Nascimbeni, V. (2015). “Age consistency between exoplanet hosts and field stars”. Astronomy & Astrophysics 585: A5. arXiv:1511.01744. Bibcode: 2016A&A...585A...5B. doi:10.1051/0004-6361/201527297.
- ^ a b Da Silva, R.; Udry, S.; Bouchy, F. et al. (2006). “Elodie metallicity-biased search for transiting Hot Jupiters. I. Two Hot Jupiters orbiting the slightly evolved stars HD 118203 and HD 149143”. Astronomy & Astrophysics 446 (2): 717-722. Bibcode: 2006A&A...446..717D. doi:10.1051/0004-6361:20054116. ISSN 0004-6361.
- ^ Jean Schneider. “Planet HD 118203 b”. The Extrasolar Planets Encyclopaedia. Paris Observatory. 2024年10月13日閲覧。
- ^ a b Maciejewski, G.; Niedzielski, A.; Goździewski, K. et al. (2024). “Tracking Advanced Planetary Systems (TAPAS) with HARPS-N VIII. A wide-orbit planetary companion in the hot-Jupiter system HD 118203”. Astronom and Astrophysics 688: 13. arXiv:2407.11706. Bibcode: 2024A&A...684A.160C. doi:10.1051/0004-6361/202451084. A172.
- ^ “List of stars and planets | IAU100 Name ExoWorlds - An IAU100 Global Event” (英語). Name Exoworlds. 国際天文学連合. 2019年7月15日閲覧。
- ^ “Methodology | IAU100 Name ExoWorlds - An IAU100 Global Event” (英語). Name Exoworlds. 国際天文学連合. 2019年7月15日閲覧。
関連項目
外部リンク