DMF15HZ系エンジンは、JRグループ・第三セクター鉄道などの気動車に広く搭載されているディーゼルエンジンの機種であり、小松製作所(コマツ)の「SA6D140H」モデルの日本国有鉄道(国鉄)式の呼称である。
概要
元はコマツが開発した建設・産業機械用の高速エンジン「SA6D140」を鉄道車両用に横形(水平シリンダー)化し改設計したものであり、開発設計に関わるコストが抑えられている。同系列のDMF11系エンジン(コマツ「SA6D125H」エンジン)は建設機械用縦形エンジンを基に開発された兄弟機であるが、本機は鉄道用横形エンジンとしては約5年遅く1992年(平成4年)に登場している。採用した鉄道事業者によってはコマツでの機種・商品名である「SA6D140H」をそのまま使用しているところもある。
開発経緯
DMF11系エンジン(SA6D125H)はコマツとして初めての鉄道用エンジンであったが、その成功によりさらに大出力の450 PS級エンジンの開発要望があり(一般車1両あたり1エンジンで済むため)、兄弟エンジンの「SA6D140」エンジンの横形化が進められた。背景にはJR東日本のキハ110系気動車のエンジンが420 PSであり、コマツがこのクラスを有しておらず採用されなかったことにもあった[注 1][1]。
1992年(平成4年)、JR北海道キハ150形気動車に初めて搭載された[2]。その後、1994年(平成6年)にJR西日本にてキハ181系特急形気動車のエンジン更新を企図した試験に用いられたが、1台の試験のみに終わり採用されるに至らなかった。
1998年(平成10年)、JR東日本E26系客車に横形の物が用いられ、ラウンジカー(電源車)床下に発電用として搭載された。北斗星用のカニ24の発電エンジンDMF31の更新として1991年(平成3年)から縦形のDMF15Z-G (SA6D140)が搭載されており、その後継エンジンであった[3]。
気動車用として本格的に採用が始まったのはJR西日本キハ187系気動車からであり、その後、出力に余裕があること及び環境保護対応としてコモンレール化されたこともあり、カミンズ製Nシリーズを採用したJR東海を除く各JRの主力エンジンになっていった[4]。
排出ガスレベルは、2021年時点で最新のSA6D140HE-3の場合、 国際鉄道連合のUIC 2規制[注 2]相当、および国土交通省の2次規制[注 3]相当となっている[5]。
このエンジンはJR東日本、JR北海道においては国鉄時代のエンジン形式命名ルールに従って「ディーゼル、6気筒、排気量15リットル、水平シリンダー、過給器・アフタークーラー装備」から「DMF15HZ」[注 4]の呼称とされているが、JR四国、JR九州、JR西日本および第3セクターなどではコマツの呼称そのままとしている。
なお、国鉄が開発した「DMF15系エンジン」は使用燃料、気筒数、排気量が同じであるため名称が重なる部分があるが、まったくの別物である。
一方でDD200に採用されたFDML30Zエンジンは本エンジンを基本に縦型のV列12気筒に設計変更したものであり、関連性がある。
諸元
メーカーによる呼称
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DMF15Z-G
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DMF15HZA-G
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SA6D140H-1
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SA6D140HE-2
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SA6D140HE-3
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N-KDMF15HZ
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DMF15HZ
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DMF15HZB-G
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方式
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直噴式
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直噴式
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直噴式
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直噴式 コモンレール
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直噴式 コモンレール
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直噴式
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直噴式 コモンレール
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直噴式 コモンレール
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直噴式
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シリンダ配置
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縦形直列
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横形直列
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横形直列
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横形直列
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横形直列
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横形直列
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横形直列
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横形直列
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横形直列
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シリンダ数
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6
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6
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6
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6
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6
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6
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6
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6
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6
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シリンダ径×行程 (mm)
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140×165
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140×165
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140×165
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140×165
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140×165
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140×165
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140×165
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140×165
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140×165
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過給方式
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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ターボチャージャー
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インタークーラーの装備
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あり
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あり
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あり
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あり
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あり
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あり
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あり
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あり
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あり
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排気量 (l)
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15.2
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15.2
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15.2
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15.2
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15.2
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15.2
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15.2
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15.2
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15.2
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連続定格出力 (ps/rpm)
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430/1,800
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520/1,800
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450/2,100
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450/2,000
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450/1,800
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450/2,100
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450/2,000
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450/2,000
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-
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組み合わされる液体変速機
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発電機
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発電機
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DW14
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DW21
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発電機
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DW14
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DW22
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発電機
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-
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全長 (mm)
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全幅 (mm)
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全高 (mm)
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主な搭載車種
JRグループ
- DMF15Z-G
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- DMF15HZA-G
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- SA6D140H-1
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- N-KDMF15HZ
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- SA6D140HE-2
-
- SA6D140HE-3
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- DMF15HZ
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- DMF15HZB-G
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- DMF15HZC-G
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第三セクター鉄道
- SA6D140H-1
-
- SA6D140HE-2
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脚注
注釈
- ^ キハ110系においては新潟鐵工所(現・IHI原動機)製のDMF13HZAまたはカミンズ製DMF14HZA(メーカー型式:NTA855-R4)が採用され、コマツ製のエンジンは採用されなかった。なお、兄弟形式のキハ100系においてはコマツ製DMF11HZ(メーカー型式:SA6D125H)または新潟鐵工所(現・IHI原動機)製DMF13HZ、カミンズ製DMF14HZ(メーカー型式:NTA855-R1)が採用されている。
- ^ 2003年1月施行、規制値はNOx:6.0 g/kWh、PM:0.25 g/kWh(原動機出力560 kW以下の場合)。
- ^ 2003年10月施行、排出ガス対策型建設機械指定制度による。規制値はNOx:6.0 g/kWh、PM:0.2 g/kWh(原動機出力130 - 560 kWの場合)。
- ^ ドイツ語の Dieselmotor、6番目のアルファベット F、排気量のリットル数 15、水平シリンダーを表す Holizontal、ターボチャージャー・インタークーラーともに装備することを指す Z を組み合わせたもの。なおターボチャージャーのみ装備の場合は末尾がSになる。
出典
- ^ 中村直生「気動車用コマツ新型エンジンSA6D140H」『電気車の科学』1993年2月号電気車研究会
- ^ 菅原重光「JR北海道キハ150系一般形気動車」『車両技術201号』1993年10月号日本鉄道車両工業会
- ^ 橋本克史「JR東日本E26系特急形寝台客車」『車両技術218号』1999年9月号日本鉄道車両工業会
- ^ 松岡成康「JR西日本キハ187系特急形気動車」『車両技術221号』2001年3月号日本鉄道車両工業会
- ^ “鉄道技術展2021 - JR四国キハ40形の走行試験で話題「DPU」4代目に”. マイナビニュース. 2021年12月14日閲覧。