x を複素変数、ai(x) を多項式として、微分作用素P = an(x) ∂n + ... + a1(x) ∂1 + a0(x), が与えられると、商加群 M = A1(C)/A1(C)P は微分方程式
P f = 0,
の解の空間と密接に関係する。ここに f は、いわば、C の正則函数である。この方程式の解からなるベクトル空間は、D-加群の準同型の空間 により与えられる。
代数多様体上の D-加群
D-加群の一般論は、複素多様体 (係数体は K = C),又は K = C のような標数 0 の代数的閉体 K 上に定義された滑らかな(smooth)代数多様体X 上で展開された。微分作用素 DX の層は、X 上のベクトル場により生成された OX-代数であると定義され、微分(英語版)と解釈される。(左) DX-加群 M は OX-加群で DX の左作用を持っている。そのような作用は、K-線型写像
を満たす。ここに f は X 上の正則函数であり、v と w はベクトル場で、m は M の局所切断であり、[−, −] は交換子を表す。従って、さらに M が局所自由 OX-加群であれば、M が与えられると、D-加群構造は平坦か、または、可積分である接続を持つ M に付随するベクトルバンドルを持つことに他ならない。
環 DX が非可換であれば、左と右の D-加群は異なっているはずである。しかし、両方の加群のタイプの間の圏同値が存在するので、入れ替えることができる。圏同値は左加群 M をテンソル積M ⊗ ΩX へ写像することにより与えられる。ここに、ΩX は X 上の微分 1-形式の最高次の外積べきにより与えられる層である。この層は、
ω ⋅ v := − Liev (ω)
により決まる自然な右作用を持つ。ここに v は階数 1 の微分作用素、いわば、ベクトル場 ω であり n-形式 (n = dim X) であり、Lie はリー微分を表す。
局所的には、X 上の座標系(英語版)(system of coordinates) x1, ..., xn (n = dim X) を選んだのち(座標系は、X の接空間の基底 ∂1, ..., ∂n を決定する)、DX の切断が、
有限生成な D-加群 M は、いわゆる「良い」フィルトレーション F∗M を持ち、このフィルトレーションは F∗An(K) と整合性を持ち、アルティン・リースの補題の状況と本質的には平行である。ヒルベルト多項式は、大きな n に対する函数
n ↦ dimKFnM
に一致する数値多項式(英語版)と定義することができる。An(K)-加群 M の次元 d(M) は、ヒルベルト多項式の次数であると定義される。この次数は、ベルンシュタインの不等式
n ≤ d(M) ≤ 2n.
により有界である。
次元が可能な限り最小な n である加群をホロノミックと呼ぶ。
A1(K)-加群 M = A1(K)/A1(K)P (上記参照)は、任意の 0 でない微分作用素 P に対してホロノミックである。ただし、単純な高次元ワイル代数は成立しない。
一般的定義
上で述べたように、ワイル代数上の加群は、アフィン空間上の D-加群に対応する。一般の多様体 X の DX に対しては有効ではないベルンシュタインのフィルトレーションは、微分作用素の階数により定義される DX 上の階数フィルトレーション(order filtration)のおかげで、定義を任意のアフィンで滑らかな多様体 X へと一般化する。付随する次数付き環 gr DX は余接バンドル T∗X 上の正則函数により与えられる。
特性多様体(英語版)(characteristic variety)は、再び M を (DX) の階数フィルトレーションに関して)適切なフィルトレーションを持っているとしたとき、gr M の零化域の根基により切り出される余接バンドルの部分多様体であると定義される。通常のように、アフィン構成は任意の多様体をつなぎ合わせる。
ベルンシュタインの不等式は、任意の(滑らかな)多様体 X に対して連続的に成り立つ。上界は、gr DX 上の余接バンドルの項での解釈の直接的な結果であることに対し、下界はより微妙な問題を含んでいる。
性質と特徴付け
ホロノミック加群は、有限次元ベクトル空間のような振る舞いをする傾向を持っている。たとえば、それらの長さは有限である。さらに、M がホロノミックであることと、複体 Li∗(M) のすべてのコホモロジー群が、有限次元 K-ベクトル空間であることは同値である。ここに i は X の任意の点の閉埋め込み(英語版)である。