高野 隆(たかの たかし、1956年9月30日 -)は、日本の弁護士。第二東京弁護士会所属。元早稲田大学大学院法務研究科教授、日弁連裁判員制度実施本部・公判弁護技術に関するプロジェクトチーム元座長、ミランダの会元代表。一般財団法人東京法廷技術アカデミー代表理事[1]。
三大刑事弁護人
刑事弁護の業界では、神山啓史、後藤貞人と共に三大刑事弁護人の一人として広く認知されている[2]。
特に3人の中でも高野は、本職の刑事弁護以外に法曹教育についても力を入れており、早稲田大学 大学院法務研究科でも教鞭をとっていた[3]。
人物
早稲田大学法学部、サザンメソジスト大学ロースクール(LL.M.)出身[4]。
後述の通り、刑事事件の弁護士として名高い。若手時代にアメリカに留学し、憲法、刑事手続法、証拠法などを学び、英会話に堪能である。近年は指導的立場につき、若手弁護士を対象とした弁護技術の研修活動にも積極的に携わっている。
特に日本の刑事司法における身体拘束問題について問題視しており、自白や証拠意見の同意をするなど有罪立証に協力的態度を示せば保釈される一方で、否認したり証人尋問を要求するなど有罪立証に非協力的態度を示せば保釈されずに身体拘束が長期にわたることについて、被告人を人質にして裁判を有利に進めるものだとして「人質司法」だと非難している[5]。
一方で左派リベラルはとしては珍しく裁判員制度推進派である。手越祐也の事務所独立の際にも弁護士として関与し、手越の独立会見に同席している。宮崎駿に容姿が似ている事から法曹界の駿などと一部で言われていた。
カルロス・ゴーンの弁護人として
元日産自動車代表取締役会長カルロス・ゴーンの弁護人として、保釈請求に際しては、住宅への監視カメラの設置など具体的条件を提示するなどの方法で、東京地裁の保釈決定を引き出している[6]。
ゴーンの日本からの密出国について、自身のブログにおいて、「(日本の)裁判官は独立した司法官ではない。官僚組織の一部だ。日本のメディアは検察庁の広報機関に過ぎない」「(ゴーン被告の密出国は)密出国を「暴挙」「裏切り」「犯罪」と言って全否定することはできないということである。寂しく残念な結論である。もっと違う結論があるべきである。確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない」と綴り[7][8]、さらに「彼と同じ財力、人脈、行動力がある人が同じ経験をしたなら、同じことをしようとするだろうことは想像に難くない」と発言した。
この発言に関して、東京都内の男性が、「被告人の逃走を肯定する発言をブログでしたのは重大な非行」などとして高野が所属する第二東京弁護士会に懲戒請求を行ったが、2021年6月、懲戒しないことが決定された[9][10][注釈 1]。また、これに関連して、同ブログに懲戒請求書をアップロードしたこと等が著作権侵害やプライバシーの侵害に当たるなどとして上記懲戒請求者から民事訴訟を提起されたが、知的財産高等裁判所は、2021年12月、著作権に基づく請求は権利の濫用であり[注釈 2]、プライバシーの侵害とも認められないなどとして、上記懲戒請求者の請求を全て棄却する判決が言い渡された(高野の全面勝訴)[11][12]。
過去の担当事件
著作・翻訳
関連書籍
- 吉野量哉『無罪 裁判員裁判372日の闘争・・・その日』竹書房、2012年11月 ※高野の弁護により無罪判決を受けた著者がその経験を綴った本
脚注
注釈
- ^ 弁護士会の懲戒請求手続は、まず綱紀委員会でスクリーニングが行われた上で、調査相当の事案のみ懲戒委員会による審査が行われる制度となっている。
本件では、綱紀委員会におけるスクリーニングの段階において、ブログ上の発言は「違法行為を肯定し、助長する発言ではない」し、「ゴーン被告人が航空機の貨物に紛れて密出国することなどもとより想定できることではなかった」等と認定し[10]、懲戒請求には理由がないと認め、懲戒委員会に事案の審査を求める必要すらないと議決した。
- ^ 同知財高裁判決においては、懲戒請求者自身が、産経新聞社に懲戒請求書を交付するという、その内容を引用した報道を行わせる目的があったことが容易に推認される行為を行っており、これにより高野がブログ上で反論をせざるを得ない状況に追い込まれていたことや、そもそも弁護士に対する懲戒請求はその内容が不当なものであったとしても対象弁護士の信用および名誉に大きな影響を与えることなどから、高野がブログに懲戒請求書全文を掲載する必要性は大きく、かつその目的や方法は正当である一方、懲戒請求者が著作権法上有する利益は大きくなく、前者が後者を上回る(公表権については「はるかに凌駕する」)と認定された。
出典
外部リンク