Recorded in 1930, in
Paris
『音楽の捧げもの 』(おんがくのささげもの、ドイツ語 : Musikalisches Opfer , あるいはDas Musikalische Opfer )BWV 1079は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ が作曲した、1つの主題に基づく16の作品からなる曲集。フーガ 2曲と4楽章からなるトリオソナタ 、ならびに10曲のカノン が含まれる。
概要
大王の主題
バッハ が1747年 5月7日 にフリードリヒ大王 の宮廷を訪ねた際[ 注釈 1] 、以下のようなハ短調 のテーマ (Thema Regium) を大王より与えられた。
バッハは、これを用いてその場でジルバーマン のフォルテピアノ により即興演奏 を行い、2ヵ月後には曲集を仕上げ、「王の命による主題と付属物をカノン様式で解決した」 (Regis Iussu Cantio Et Reliqua Canonica Arte Resoluta ) とラテン語 の献辞 を付けて大王に献呈した。献辞の頭文字を繋いだ言葉 RICERCAR (リチェルカーレ )は、「フーガ」様式が出来る前の古い呼び名である[ 1] 。
大王の主題が全曲を通して用いられたこの曲集はその後「音楽の捧げもの」として知られている。当時の新聞記事や証言が伝えるところによれば、王の与えた主題を用いて即興演奏を求められたバッハは3声のフーガを演奏した。6声のフーガの演奏も求められたがさすがに即興では難しく、自作の主題による即興演奏を行った。のちにその場で果たせなかった6声のフーガを含むこの作品を王に捧げたと言われる[ 2] 。
王の主題にはヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ やヤン・ディスマス・ゼレンカ の作品を参考にしたという説が挙げられている[ 2] 。アマチュアの研究家であるハンフリー・サスーン (Humphrey Sassoon) は2003年、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル のフーガ(HWV 609)の主題が「王の主題」と類似しており、王が主題を考案する際やバッハが「リチェルカーレ」を作曲する際に下敷きにしたと主張した[ 3] [ 4] 。
曲の構成
六声のリチェルカーレ譜面
曲集の正しい配列は確定しておらず、出版社や演奏者により順序に違いが生じる。
2曲のフーガ はリチェルカーレ と題されている。一曲は3声のフーガで、これが王の前での演奏に近いのではないかとも言われる。もう一曲が6声のフーガである。
10曲のカノン のうち9曲は「謎カノン 」と呼ばれる形式で書かれている。即ち単旋律に記号が付されており、演奏者はその記号に基づいて曲を完成させねばならない。
また、4楽章からなるトリオソナタが含まれ、これにのみ楽器の指定がある。
1つの主題に基づいて複数の対位法的作品を作るという同一のコンセプト、および主題の類似性から『フーガの技法 』との関連が指摘される。
編曲
有名な編曲にアントン・ウェーベルン による管弦楽用編曲『6声のリチェルカーレ』(1935)がある(NHK-FM の『現代の音楽 』のテーマ曲として使われていた)。またイーゴリ・マルケヴィチ も管弦楽用に編曲を行っている。
ソフィア・グバイドゥーリナ のヴァイオリン協奏曲『オッフェルトリウム 』や尹伊桑 の無伴奏ヴァイオリン曲『大王の主題』はこの曲の王の主題を元にしている。
脚注
注釈
出典
^ Marissen, Michael (2017). J.S.Bach: Musikalicshes Opfer (pdf) (Media notes). Bach Collegium Japan , Masaaki Suzuki . BIS . BIS-2151。
^ a b Schulenberg, David (2006), The Keyboard Music of J.S. Bach (2nd ed.), Routledge , pp. 390-395
^ Walker, Paul (2017), Leaver, Robin A., ed., The Routledge Research Companion to Johann Sebastian Bach , Routledge, p. 387
^ Sassoon, Humphrey (2003), “JS Bach's Musical Offering and the Source of Its Theme: Royal Peculiar” , Musical Times 144 (1885): 38-39, https://www.jstor.org/stable/3650725
外部リンク