部局長 (教育組織の役職)

大学組織における部局長(ぶきょくちょう)は、大学の役職の一つであり、中間組織の長である[1]。部局長は学長学科長の中間に位置する[2]。学部長、研究科長、図書館長、学生部長等が部局長に分類される[3]

スタンフォード大学など歴史の古い私立大学の場合は部局長選定手続きが閉鎖的な傾向にあるが、米国の州立大学など公的な大学の場合は手続きが公開されており学外から部局長が登用されることも多い[1]

日本では国立大学の法人化以前から平成19年に至るまで部局間の情報交換や全学的事項の審議等を目的として部局長会議が多くの大学に設置されている[4]

大学組織内での位置づけ

日本

日本では1949年に定められた教育公務員特例法の定義によれば、大学の副学長、学部長等が部局長に含まれる[5](同施行令によれば分校主事、附置研究所長、附属病院長、附属図書館長も含まれる[6])。部局長のうち学部長は当該学部の教授会によって、他の部局長は大学の評議会の諮問と学長によって選出される[5]。1961年に日本学術会議大学の自治を拡充するため学部長以外の部局長の選出に評議会の諮問を導入するよう勧告した[6]筑波大学など新構想大学では学部長が部局長に置き換えられた[7]

日本の国立大学法人では、学部・研究科・研究所ごとに置かれる教授会を当該中間組織の部局長が主催する[8]。また、大学の自治組織として部局長会議が置かれることがある[9]。制度上は学長が部局長を任命するが、歴史的には部局内での選考によって決められている[10]。制度上の権限はないものの、部局長会議は大学の予算配分に一定の関与をすることがある[11]

英語圏

米国の研究型大学では、頂点に立つ学長(英語 president)がプロヴォスト(学内行政を統括する役職、英語 provost)を指揮し、プロヴォストが部局長(英語 dean)を指揮し、部局長が学科長を指揮する、という指揮命令系統になっていることが多い[12][13]。部局長(ディーン)は学長の指名により選任されるが、大学理事会による事前の候補選定があることも多い[14]

欧州大陸

フランスでは部局長(フランス語 directeur de composante[15][16])は当該部局の教員の中から選出するよう教育法典フランス語版で定められている[17](任期は5年)[15]。選出の権限を持つのは大学の評議会である[17]。フランスでは大学の自律性が制約される傾向にあったが、2013年に制定された高等教育・研究法フランス語版により「同僚制」を取り戻す目的で部局長会議(フランス語 conseil des directeurs de composantes)が大学に設置されることになった[18]。部局は教育研究単位フランス語版(フランス語 unité de formation et de recherche; 略称 UFR)とその他の教育研究施設(フランス語 institut/école)からなる[19]。UFRは1968年以前までは学部(フランス語 faculté)と呼ばれた[20]

ドイツでは、部局長は当該部局教員の代表者であり、(当該部局所属者には限られない)当該専門分野の教員からなる専門分野協議会によって選出される[17]

出典

  1. ^ a b 米澤彰純「部局長・学科長の役割・権限と選考 米英中豪主要大学の事例分析」『東北大学高等教育開発推進センター紀要』第4号、東北大学高等教育開発推進センター、2009年、13-24頁、ISSN 18810853NAID 120005467221 
  2. ^ 高等教育ガバナンスにおける大学・専門職団体の機能に関する国際比較研究 2007
  3. ^ 国立大学法人化後の財務・経営に関する研究 川嶋 太津夫 第6章国立大学の法人化と学長職の変容 111ページ 平成19年12月 国立大学財務・経営センター WayBackMachine
  4. ^ 浦田 広朗 国立大学法人化後の財務・経営に関する研究 経営組織の構造と機能 111ページ 平成19年12月 WayBackMachine
  5. ^ a b 教育公務員特例法 - e-Gov法令検索
  6. ^ a b 日本学術会議大学の管理制度の改善について(勧告)昭和37年5月11日
  7. ^ 大野雅敏「学部長」『新教育学大事典』第1巻、平成2年 p.426
  8. ^ 国立大学法人化の枠組 国立大学協会設置形態検討特別委員会平成13年5月21日
  9. ^ 国立大学法人の組織及び運営に関する制度の概要について 平成26年12月15日文部科学省高等教育局国立大学法人支援課
  10. ^ 澤 昭裕 国立大学法人法と国立大学改革 RIETI Policy Discussion Paper Series03-P-002 2003年9月
  11. ^ 国立大学法人化後の財務・経営に関する研究 山本 清 吉田 浩 城多 努学内の予算配分 WayBackMachine
  12. ^ 船守美穂 研究型大学の学術マネジメント : その体制と潮流 日本高等教育学会大会発表要旨集録, 第16回大会, 2013.5, pp. 53-54
  13. ^ 中島英博「アメリカにおける大学執行部向け研修の現状と課題」『名古屋高等教育研究』第12号、名古屋大学高等教育研究センター、2012年、53-66頁、doi:10.18999/njhe.12.53ISSN 1348-2459NAID 40019245986 
  14. ^ 小林雅之 執行部と教員組織をつなぎ意思決定に貢献するプロボスト 進研アドBetween2014 6-7月号
  15. ^ a b Code de l'éducation L713-3
  16. ^ 文部科学省先導的大学改革推進委託事業(平成23-24年度)最終報告書 諸外国の大学の教学ガバナンスに関する調査研究 広島大学高等教育研究開発センター(研究代表者:大場淳)
  17. ^ a b c 「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成25年12月24日 組織運営部会)平成25年12月24日中央教育審議会大学分科会組織運営部会 諸外国における大学ガバナンスの状況
  18. ^ 大学ガバナンスの国際比較─研究の視点の整理 RIHE 128, 75-97, 2014-05-20
  19. ^ 大場淳「フランスの高等教育機関と学位授与権」(PDF)『日仏教育学会年報』第14号、日仏教育学会、2007年、45-55頁、ISSN 1341-0814NAID 40016395632 
  20. ^ Isabelle Rey-Lefebvre Les directeurs d’UFR veulent plus de poids dans la gestion des universités 4 avril 2013

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