色鉛筆
色鉛筆
色鉛筆
赤青鉛筆
色鉛筆 (いろえんぴつ、米 : colored pencil)は、顔料 と蝋などを固めた芯を木製または紙巻きの軸に収めた画材 ・筆記具 である。鉛筆 の一種だが、普通の黒芯鉛筆とは芯の製法が異なり、含む顔料によって様々な有彩色 および無彩色 の芯を持つ。
筆記 、図画 、マーキング などに用いられる。欧米では19世紀始めにはマーキング用として存在し、1908年にはファーバーカステル がポリクロモス色鉛筆(全60色)を発売、1924年にカランダッシュ が競合製品を発売するなど、1920年代頃には美術用を銘打つ60色程度の製品が一般的となった[1] 。日本では明治 時代には国定教科書 「新定画帖 」に基づき小学校の教育用画材として用いられていた[2] 。
日本産業規格 のJIS S 6006「鉛筆,色鉛筆及びそれらに用いるしん」には色鉛筆の定義や品質規格、規格色の48色が定められている。JIS規格色は日本の学童用 色鉛筆でよく用いられる[3] 。
なおJIS S 6006は1998年3月にJIS非指定品目に指定され、JISマークの表示が廃止されているが、日本の各メーカーではその後もJIS規格に沿って製造されている。
性質
原料
芯の原料には着色顔料や染料 、タルク などの体質顔料、展色剤 としての蝋 、カルボキシメチルセルロース などの糊剤 が用いられ、油性 である[4] [5] [6] [7] [8] 。金色 、銀色 には銅 やアルミニウム の金属粉 が用いられる[9] 。メーカーの一般向け解説[4] ではタルク50%、蝋25%、顔料20%、糊剤5%の組成例が示されている。
JIS S 6006規格、欧州規格 EN 71、米国画材・工芸材料協会 (英語版 ) Approved Product(ACMI-AP)認証では鉛 、カドミウム 、クロム といった有害物質は規制されている[7] [10] [11] 。一般的な色鉛筆の経口毒性はほとんどない[8] 。
硬度
1000℃以上で焼成 される黒鉛芯と異なり、色鉛筆芯は50℃程度の乾燥 によって仕上げられるため、多くの顔料が使用でき、ソフトな描き味を持つ。また蝋を含むため紙への定着性がよいが、消しゴム で消しにくい[9] 。
JIS S 6006での硬度には硬質・中硬質・軟質があり、硬質は製図 用途、中硬質は筆記や図画用途、軟質は紙 以外への使用に適する[7] 。メーカーの説明によれば、実用上の摩耗 性は黒芯鉛筆と比較すると硬質でB - 2B相当、中硬質で5B - 6B相当、軟質で10B(JIS規格外)以上とされる[12] 。
なお、日本における硬質色鉛筆は2000年代 以降生産が縮小されており、大手メーカーのトンボ鉛筆 ・三菱鉛筆 はいずれも、現行製品では赤1色のみのラインアップとなっている。
軸
木製軸には黒芯鉛筆同様にヒノキ科 のインセンスシダー が品質・調達性に優れ用いられる[13] 。軸の形状には画材として色々な持ち方ができるよう丸軸がよく用いられる[14] 。丸軸にはかつて太く軟らかい芯を均等な厚みで保護する理由もあったという。六角軸は日本より海外製品で用いられる割合が多い[9] 。
軟質色鉛筆のダーマトグラフ には紙巻き軸が用いられるが、これは芯に蝋成分が多いため接着性・熱膨張率 が異なり、伸縮性のある紙巻きが適するためである[15] 。
耐変質性
色鉛筆で着彩されたロートレック の素描("At the Circus: Entering the Ring"、1899年、J・ポール・ゲティ美術館 )[16]
色鉛筆の筆跡耐光性 は顔料によって異なる。JIS S 6006規格には耐光性の基準が定められているが、赤紫 、藤紫 、藤色 、薄紫 、桃色 の基準は低めである。耐光性に配慮した製品もあり、一部の専門家向け色鉛筆ではASTM D6901規格やブルーウールスケール (英語版 ) 、その他自社基準に基づいた耐光性評価を色ごとに表示している[17] 。
また温度は芯の軟らかさに影響し、湿気 は強度に影響を与える[12] [18] 。経年変化で蝋が白いブルーム として表面に浮き出ることもあり、高温ほど顕著になる[19] [20] 。フィキサチーフ などの定着剤の使用はブルーム予防に有効とされる一方で、溶媒 を含むため滲みや変色の原因となる場合もある[20] [21] 。
特殊な色鉛筆
水彩色鉛筆
水筆 などを使って筆跡を水彩 状に滲ませることができる水彩色鉛筆 もある。普通の色鉛筆は油性で水に溶けないが、水彩色鉛筆は乳化剤 の添加などで水溶性 を持たせてある[1] [22] 。水彩色鉛筆での硬質・軟質は乳化剤の量、すなわち溶けやすさを表す場合もある。
また、油性色鉛筆もテレビン油 やペトロール (英語版 ) 、石鹸 水、専用ぼかし液を使えば筆でぼかすことができる[23] [5] [24] [25] 。ただしテレビン油やペトロールなどの揮発性油には中毒性・引火性があり、充分な換気・管理が必要になる[26] [27] [28] [29] 。
カラーレス・ブレンダー
着色顔料を含まないカラーレス・ブレンダーと呼ばれる色鉛筆もある。色鉛筆画の制作において、ざらざらした筆跡のスムージングや混色、バーニッシング技法(英 : burnishing、つや出し)[30] に用いられる[31] [32] 。
軸全体が芯
軸全体が芯で構成された色鉛筆もある。軸全体が芯のクーピーペンシル は普通の色鉛筆とは製法がやや異なり、ポリエチレン 樹脂を使用するため融点 が高く、芯に直接触れても手が汚れない作りになっている[33] [34] 。
芯ホルダー式・シャープペンシル用
芯のみを交換できる芯ホルダー 式色鉛筆や、シャープペンシル 用の色芯もある。シャープペンシル用の色芯には、色鉛筆と同じ製法の非焼成芯と、強度を増した焼成芯がある[35] 。後者は原料に窒化ホウ素 やタルク、雲母 、粘土鉱物 を用いて白色多孔質 に焼成され、これにインク を染み込ませることで製造される。
脚注
出典
^ a b Margaret Holben Ellis, M. Brigitte Yeh, Categories of Wax-Based Drawing Media , WAAC Newsletter , Western Association for Art Conservation, September 1997 Vol. 19 No. 3, 2014年8月25日閲覧.
^ 明治時代の蝋チョーク , サクラクレパス, 2014年8月24日閲覧.
^ 鉛筆JISに関するQ&A , 日本鉛筆工業協同組合, 2014年8月24日閲覧.
^ a b 色えんぴつができるまで , 三菱鉛筆, 2014年8月24日閲覧.
^ a b 6.色鉛筆の芯の成分 , トンボ鉛筆, 2014年8月24日閲覧.
^ 画材について , サクラクレパス, 2014年8月24日閲覧.
^ a b c 鉛筆・色鉛筆のJISについて , 日本鉛筆工業協同組合, 2014年8月24日閲覧.
^ a b 鉛筆、色鉛筆 (Ver 1.00) , 中毒情報データベース , 日本中毒情報センター, 1990年2月15日, 2014年8月24日閲覧.
^ a b c ののちゃんのDO科学, 色鉛筆はどうして色が出るの? , 朝日新聞be , 朝日新聞社, 2008年9月21日, 2014年8月24日閲覧.
^ EN 71(Safety of toys/玩具の安全性) Part 3(2013)について , JFRLニュース , 日本食品分析センター, Vol.4 No.25 Oct. 2013, 2014年8月25日閲覧.
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^ a b 色鉛筆に硬度はないのか , 三菱鉛筆, 2014年8月24日閲覧.
^ 鉛筆のできるまで , 日本筆記具工業会, 2014年8月26日閲覧.
^ えんぴつの豆知識, 軸はなぜ六角形が多いの? , 三菱鉛筆, 2014年8月24日閲覧.
^ ダーマトグラフの豆知識, なぜ軸が紙巻きなの? , 三菱鉛筆, 2014年8月26日閲覧.
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^ 4.芯が折れてしまいます。 , トンボ鉛筆, 2014年8月24日閲覧.
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^ 色鉛筆の描線に定着剤(フィキサチーフなど)を使えるのか , 三菱鉛筆, 2014年8月25日閲覧.
^ ターレンスクラブ, 画材知識 , ターレンスジャパン, 2014年8月27日閲覧.
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^ 国際化学物質安全性カード ストッダード溶剤 ICSC番号:0361 (日本語版) , 国立医薬品食品衛生研究所 , https://chemicalsafety.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_card_id=0361&p_version=2&p_lang=ja 2014年8月26日 閲覧。
^ Helen South, Burnishing , Drawing Glossary , About.com, 2014年9月5日閲覧.
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^ クーピーペンシル , サクラクレパス, 2014年8月24日閲覧.
^ そういえばクーピーってなぜ手が汚れないの? , Excite Bit コネタ , エキサイト, 2008年2月22日, 2014年8月24日閲覧.
^ 5.カラーシャープ芯について , トンボ鉛筆, 2014年8月24日閲覧.
関連項目
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