『献堂式』序曲(けんどうしきじょきょく、Ouvertüre „Die Weihe des Hauses“) 作品124は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲した序曲である。ベートーヴェンが純粋管弦楽のために作曲した最後の作品にあたり、1820年代に書かれた唯一の序曲でもある。また祝典劇の『献堂式』も解説する。
概要
本作は1822年に、ウィーンに新築されたヨーゼフシュタット劇場(ドイツ語版)のこけら落としのために作曲された祝典劇の序曲である。劇場の支配人カール・フリードリヒ・ヘンスラー(ドイツ語版)は作家のカール・マイスル(Karl Meisl, 1761年 - 1825年)に劇の制作を依頼し、マイスルが制作した作品は『侯爵の肖像』と『献堂式』の2作品であった。祝典劇の『献堂式』はかつてブダペストで上演された付随音楽『アテネの廃墟』(コツェブー原作)を翻案することが決まったため、マイスルは内容を一部変更し、同時にベートーヴェンも劇の音楽を改作することとなった(ただし大半は『アテネの廃墟』からの転用であった)。この改作で生み出された作品が合唱曲(WoO.98)と本作の『献堂式序曲』である。
祝典劇の初演は1822年10月3日に、ウィーンのヨーゼフシュタット劇場でフランツ・グレーザーの指揮で行われた。また当日は皇帝フランツ2世の聖名祝日でもあった。また、1824年5月7日に交響曲第9番が初演された際に、ミサ・ソレムニスからの3曲(プログラムには「三つの大賛歌」として記載)とともにこの曲も演奏されている。
出版・献呈
序曲
マエストーソ・エ・ソステヌート(ハ長調、4分の4拍子)の序奏とアレグロ・コン・ブリオ(ハ長調、4分の4拍子)の主部で構成される。序奏は5和音の強奏によって開始され、木管による行進曲風の主題からトランペットによるファンファーレに続く。主部は2つの旋律を軸にした自由な二重フーガによって重厚に奏される。コーダは壮大なクライマックスで力強いハ音のユニゾンの上で終える。演奏時間は約10分ないし12分。
この序曲で二重フーガや対位法が用いられているが、これは当時ベートーヴェンがJ.S.バッハやヘンデルらに強い関心を持っており、彼らに敬意を込める形で作品に投影しているといえる。
楽器編成
参考資料
外部リンク