『無人島に生きる十六人』(むじんとうにいきるじゅうろくにん)は、航海専門家の須川邦彦による日本の海洋冒険譚。1899年(明治32年)に中川倉吉(のちに東京高等商船学校教官)が体験した遭難と漂流、そして流れ着いた無人島での生存譚を須川が記した。
月刊少年雑誌『少年倶楽部』に1941年(昭和16年)10月から翌年10月まで海洋事実物語として連載された作品(挿画:北宏二)で、最初の単行本は1943年(昭和18年)に「少国民の日本文庫」の一冊として発行され、その年の野間文芸奨励賞を受賞した。
2022年4月に良知真次の総合演出、大野裕之の脚本・演出による舞台『無人島に生きる十六人』が上演された[1]。
物語
1899年(明治32年)、千島列島と内地とを結ぶ帆船である龍睡丸は、海が氷に閉ざされる期間の船舶の有効活用として、太平洋に新規資源開拓に駆り出されるが、これが同年5月20日にミッドウェー近海のパールアンドハーミーズ環礁にて座礁する。
乗員である16名は環礁の小島にたどり着き、そこで他船による救助を希望に、文明から断絶された生活基盤を固めていく。
物語の舞台
座礁・沈没した龍睡丸の乗員の16名が流れ着いたのはパールアンドハーミーズ環礁であり、この中でも体験内容の「本部島」に最も近い形状の島はサウスイースト島とされている。サウスイースト島は小島であるが、ハワイモンクアザラシやウミガメ、アホウドリが生息している。
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パールアンドハーミーズ環礁
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サウスイースト島(本部島)
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島の様子
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生息するアザラシ
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環礁の全体図
龍睡丸漂流記
『無人島に生きる十六人』は実際に起きた出来事を元にしており[2][3]、本書とは別にこの漂流記を取り上げたものとして明治33年に雑誌『少年世界』に連載された「漂流顛末龍睡丸」(事実談)(武田櫻桃筆記)がある。この連載は明治36年には『探検実話 龍睡丸漂流記』(著作兼発行人大道寺謙吉、共昌社)として刊行され、1994年には『出にっぽん記 : 明治の冒険者たち』(ゆまに書房)の第11巻に収録された|ref1=[4]。
登場人物
16名[4]
- 船長
- 中川倉吉
- 運転士
- 榊原作太郎(榊原作郎)
- 運転見習
- 松村鈷一
- 国府孝作
- 川口磊三
- 信澤與一郎
- 池本善太郎(池本善郎)
- 水夫長
- 安岡丑五郎
- 漁業長
- 鈴木孝吉郎
- 漁夫
- 高崎和平
- 浅沼文八
- 小笠原島住民
- ウ井リヤムエレン(ウ井リヤム、イレン)
- ケレツプウエブ
- シヨ子ーウエブ
- 練習生
- 藤田堪太郎
- 東野長作
評価
椎名誠が新潮社の編集者にこの本の話をしたことをきっかけに、2003年に新潮文庫の1冊として刊行された[5]。椎名誠の選ぶ漂流記のベスト1であると評価している[6]。
受賞
出版物
- 『無人島に生きる十六人』大日本雄弁会講談社〈少国民の日本文庫〉、1943年6月。全国書誌番号:20997829。NCID BA42023811
- 『無人島に生きる十六人』講談社、1946年。全国書誌番号:45017459
- 『海洋冒険物語 無人島に生きる十六人』大日本雄弁会講談社、1948年10月。全国書誌番号:20535898
- 『海洋冒険物語 無人島に生きる十六人』松田穣絵、講談社北海道支社、1948年10月。全国書誌番号:45012641
- 『無人島に生きる十六人』村上松次郎絵、講談社〈少年少女評判読物選集 8〉、1952年2月。全国書誌番号:45037883。NCID BN0953370X
- 『無人島に生きる十六人』中村英夫絵、講談社〈少年少女講談社文庫 C-2〉、1972年7月。全国書誌番号:45001338
- 『無人島に生きる十六人』新潮社〈新潮文庫〉、2003年7月。全国書誌番号:20421926。ISBN 9784101103211。NCID BA62681013
- 『無人島に生きる十六人』フロンティアニセン〈フロンティア文庫 79〉、2005年4月。全国書誌番号:20968235。ISBN 9784861970788
- 英語版 Sixteen Stranded on a Desert Island、翻訳者 Ben Bentley-Taylor, Yoriko Takasaku (2019年10月 Takasaku Translations)、ISBN 9781697014051
公演
舞台「無人島に生きる十六人」
キャスト
脚注
外部リンク