『暗夜鬼譚』(あんやきたん)は、瀬川貴次による日本のライトノベル。イラストは華不魅が担当している。集英社スーパーファンタジー文庫→コバルト文庫(集英社)より1994年6月から2005年11月まで刊行された。
あらすじ
主人公・夏樹は、元服したばかりの15歳。田舎から都へ上京し、宮中に勤め始める。ところがある夜、妖しいまでに美しい美少年と、冥府の獄卒を目撃したことから、その日常は一変する。
登場人物
- 夏樹(なつき)
- 主人公の少年。とある一件から、破格の出世で蔵人を務めるが、帝の世話で苦労が絶えない。様々な困難に巻き込まれるが(あるいは、ほうっておけないその性格から、自分から首をつっこみ)、母方の曾祖父『菅原道真公』の形見である太刀に幾度となく、窮地を救われる。一条ほどではないにしろ、整った顔立ちをしており、内裏の女房たちからモテているのだが、本人には全く自覚はない。自身も貴族ではあるのだが、庶民や身分の低い者を顧みない貴族社会に対し、徐々に怒りと失望を抱くようになっていく。
- 一条(いちじょう)
- 夏樹の友人。陰陽生。夏樹の隣家に住んでいる、ミステリアスな美少年。クールな性格だが、口は悪く、手も早い。事あるごとに、馬頭鬼のあおえを張り倒している。陰陽師の才覚はかなりのもので、夏樹とともに様々な事件を解決する。水無月や長月など、月の名を持つ式神を従えている。華奢な見た目からは想像もつかないほどの怪力の持ち主でもある。本人は否定するものの、母親が妖狐であるため、物の怪の血に目覚め、自我を失うことがある。
- 深雪(みゆき)
- 夏樹の父方の従兄弟。幼い頃はおてんば娘だったが、現在は弘徽殿女御の女房として、内裏に務めている。宮中での名は「伊勢の君」。しかし、実はかなりの演技派で、宮中では完璧に有能な女房を演じるものの、根は昔からあまり変わっておらず、夏樹と2人きりの時には素が露わになる。夏樹に恋心を抱いているのだが、あまりの鈍感さにいらいらさせられることもある。一方で、度々文をくれる賀茂の権博士のことも気になっている。
- あおえ
- 冥府の獄卒である馬頭鬼。恐ろしい馬頭を持つ巨漢だが、性格は不真面目で臆病。人の魂は平気だが、化け物のたぐいには非常に怖がる。わけあって、冥府を追放され、一条の居候となる。女装が趣味。
- 賀茂の権博士(かものごんのはかせ)
- 一条の師匠。弱冠20歳にして、才覚を発揮する、有能な陰陽師。一条は「保憲さま」と呼んでいる。弟子と同様、かなりの美形。忘れっぽい性格で、大事なものでも置き忘れたり、一度会った人でも本気で覚えていなかったりする。深雪を気に入っており、よく文を出している。
- 帝(みかど)
- 自称「愛の狩人」。運命の恋を求め、都の夜を徘徊し、そのたびに夏樹ら蔵人を悩ませる。
- 桂(かつら)
- 夏樹と深雪の乳母。年のせいもあって、目があまりよくない。夏樹の出世を夢見ている。陰陽師を嫌っており、夏樹が一条と仲良くするのも、あまり良くは思っていない。
- しろき
- 冥府の獄卒である牛頭鬼。あおえの元同僚。追放されたあおえを気にかけ、時々現世へやってくる。
- 真角(ますみ)
- 賀茂の権博士の年の離れた弟。陰陽師の家系に生まれたが、陰陽師になるつもりはない。一条とは犬猿の仲。
既刊一覧
オリジナル版
再録版
脚注