壺イメージ療法

壺イメージ療法(つぼイメージりょうほう)とは、臨床心理学田嶌誠一が考案したイメージ療法のひとつのことである。

概説

田嶌がある患者にフリーイメージ法を適用していた際、患者が“洞窟にが並んでいる”というイメージを語った。当初は壺から何か出てくるかもしれない、といった教示を行ったが変化がなかったため、“その壺に入ってみる”と教示したところ、これまでと異なり、身体感覚を中心としたイメージが出現した。その後、患者の症状は消失したという。 このエピソードを契機に工夫を重ね、1983年に発表された。その後1987年に創元社より『壺イメージ療法 その生い立ちと事例研究』が出された。精神医学者中井久夫も同書の座談会に参加するなど、注目された技法であるが、その後同書は絶版となった。

心のことが入っている“壺”を複数イメージし、その壺の中に入って、そこで感じる身体的・心理的感覚を体験してみたり、壺自体の落ち着く仕舞方を工夫するなど、イメージ内容によってその後の展開は様々である。壺はイメージの展開をある程度コントロールするとされ(イメージの安全弁)、他のイメージ技法より比較的マイルドであるといわれている。 ただし、田嶌自身“安全弁は暴露弁”と指摘するように、同技法の適用は他法と同じように慎重を有するし、専門家に実施してもらう必要がある。

なお壺やその内容物に関する象徴的解釈(イメージ内容)よりも、そのイメージをじっくりと体験すること(イメージ体験)、及びそれをいかに体験するかという“イメージの体験様式”を重視し、内界に対する“受容的探索的構え”の形成が治癒要因であるとされる。またその体験様式の変化をモデル化し、イメージが持つ治癒力に関する論を展開している。

なお、海外で発刊されたイメージ療法ハンドブックに同技法が収録されている。

文献

  • 田嶌誠一『壺イメージ療法 その生い立ちと事例研究』創元社、1987年
  • 田嶌 誠一(1994) 「壺イメージ描画法」九州大学教育学部紀要, 教育心理学部門 39(1・2), 63-68[1]
  • 田嶌 誠一(2000)「壺イメージ法の健常者への適用」心理臨床学研究 18(1), 1-12、[2]
  • 中島暢美(2006)「就職活動ができない男子学生への壺イメージ療法についての一考察--トラウマの治癒」心理臨床学研究 24(2), 166-176 [3]
  • 松木 繁(2010) 「読む 臨床家のためのこの1冊(53)田嶌誠一編『壺イメージ療法--その生い立ちと事例研究』」臨床心理学 [4]

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