嚢胸下綱 (Ascothoracida) は、甲殻類に属する分類群で、すべて無脊椎動物の寄生虫である。宿主は棘皮動物や刺胞動物。
化石記録はないが、白亜紀のサンゴやウニから本種と考えられる生痕化石が見つかっている[1]。
形態
幼生は一般的なキプリス幼生の形態であるが、蔓脚類と違って触角にセメント腺を持たない。宿主には触角の鉤爪で付着することになる。
成体雌は腹部・付属肢が消失し、背甲が肥大して樹状・褶状になる。体長は最小でサンゴカクレムシ科の1.5mm、最大でシダムシ属の16cm。雄は典型的な矮雄であり、成熟しても小型のままである[1]。
Sinagogidaeに属する種の雌成体は幼生の構造をかなり維持しており、一部の種は別の宿主に泳いで移動することも可能である。これは祖先形質を維持していると考えられる[1]。
生態
サンゴカクレムシ科の一部を除いて雌雄異体である。
Ulophysema oeresundenseはよく研究された種の一つで、生活環の一部が解明されている。宿主はオカメブンブクEchinocardium cordatumであり、雌のキプリス幼生はウニの生殖孔から侵入する。体腔に移動した雌はそこで成長し、成熟すると宿主の体壁に付着して孔を開ける。この孔から雄が侵入し、受精とキプリス幼生の放出が行われる[1]。
Parascothorax synagogoidesはノルマンクモヒトデ Ophiophthalmus normaniを宿主とするが、寄生去勢が観察されている[1]。
Waginella sandersiにエビヤドリムシ類が超寄生することが確認されている[2]。
下位分類
分類はWoRMS[3]による。
キンチャクムシ目 Laurida Grygier, 1987
シダムシ目 Dendrogastrida Grygier, 1987
脚注