名無しの男 (イタリア語 : Uomo senza nome 英語 : Man with No Name )は、西部劇 のストックキャラクター である。多くの場合、セルジオ・レオーネ 監督の「ドル箱三部作 」とも呼ばれる『荒野の用心棒 』『夕陽のガンマン 』『続・夕陽のガンマン 』の3作品でクリント・イーストウッド が演じた役を表す。
2008年、「エンパイア 」で“名無しの男”は最も有名な映画のキャラクターの43位に選ばれた。
登場
映画
書籍
名無しの男を主人公としたコミックがいくつか存在する。アメリカのコミック会社ダイナマイト・エンターテイメント は2008年に『続・夕陽のガンマン』の後日談の物語を発表した。ダイナマイト社はシリーズを終わらせ The Good, The Bad, and the Ugly (『続・夕陽のガンマン』の英題)の題名で新シリーズを作成した。しかし、新シリーズはこの題名にもかかわらず、映画とは無関係のものとなっている。
スティーヴン・キング は名無しの男を、彼の著作である『ダーク・タワー 』シリーズのメインキャラクターでありガンスリンガー としても知られるローランド・デスチェインの参考にしたと述べた。
コンセプトと創造
『荒野の用心棒』の名無しの男 『荒野の用心棒 』は黒澤明 監督の『用心棒 』を基に制作された。そのため、このキャラクターは『用心棒』で三船敏郎 が演じた型破りの浪人 を参考にしている。この2人のキャラクターには無口、粗野、皮肉屋、流れ者、凄腕といった共通点がある。また、普通の正義漢でないところやある武器の達人というところ(三船は日本刀 、イーストウッドはリボルバー )も同じである。
イーストウッドの演じたキャラクターもまた、三船の浪人役と同じで本名不詳である。三船演じる浪人は名を聞かれたときに『用心棒』では“桑畑三十郎”と(桑畑を見ながら)、『椿三十郎』では“椿三十郎”と(ツバキを見ながら)、偽名 で答えている。また、三船は映画の中でよく懐手(腕を着物の中に隠す)をしているが、イーストウッドの手もポンチョ で隠れている。イーストウッドも、『荒野の用心棒』に出演する前に『用心棒』を観て、黒澤監督と登場人物に感銘を受けたと語っている。『荒野の用心棒』では彼は三船を完璧に真似ようとはしなかった。むしろ、脚本の一部のセリフを削ってさらに無口で謎めいた男に仕上げた。3部作が進むにつれて、このキャラクターは更にセリフが少なく、ストイックになっていった。
なお、『用心棒』自体がダシール・ハメット の『血の収穫 』が基になっていると言われている。黒澤研究家のデイヴィッド・デサーと映画評論家 のマニー・ファーバー は、はっきりと『血の収穫』が基であるとしている。レオーネも
"黒澤の『用心棒』はアメリカのハードボイルド 小説が基になっている。だから私が物語の舞台を元に戻した"[1]
と語っている。黒澤は、ハメットを映画のクレジットには加えなかったが、彼自身も参考にしたことを認めている。ハメットの『血の収穫』の主人公の名は不明 ― 名無し ― 探偵事務所で働くコンチネンタル・オプ とだけ明かされている。
その後ブルース・ウィリス 主演で『ラストマン・スタンディング 』(1996年 )という映画が制作されているがこれは『用心棒 』の公式リメイク作品である。
イーストウッドの監督、主演作『ペイルライダー 』の主人公も劇中、名前は明かされない。原語の英語では「Preacher」、日本語吹替・字幕では「牧師さん」と呼ばれ、名無しの男のまま舞台の街を去っていく。
あだ名
『荒野の用心棒』では“ジョー”と呼ばれる。
『夕陽のガンマン』では“モンコ”(スペイン語:“片腕”)、射撃のとき以外はほとんど左腕しか使わない事から。
『続・夕陽のガンマン』では、イタリア語の脚本だと「ジョー」と名付けられているが、劇中ではテュコが“ブロンディ”(金髪)のあだ名で呼んでいる。インターナショナル版でカットされたシーンでは北軍の大尉が彼に名前を聞いている。その時彼はテュコと同じく返事をしなかった。その後大尉が別の話を始めた。
『ペイルライダー』では英語で“Preacher”、日本語吹替・字幕で“牧師さん”と呼ばれる。
脚注
^ Frayling, Spaghetti Westerns (1981)
外部リンク