ラージダーニー急行

(テジャス)ラージダニー急行
(Tejas) Rajdhani Express
WAP7形牽引のラージダニー急行
WAP7形牽引のラージダニー急行
概要
インドの旗 インド
種類 Superfast Express / Superfast Mail
(Rajdhani Superfast)
現況 運行中
運行開始 1969年
運営者 インド国鉄
路線
起点 デリー市内の下記3駅
ニューデリー駅(New Delhi)
ニザムディーン駅 (H.Nizamuddin)
アナンドビハール駅 (Anand Vihar)
終点 インド国内各地19か所
営業距離 最大約3,100㎞
運行間隔 列車別に1週間あたり1~7往復
列車番号 原則として12000番台
(ただし22000番台、20000番台も有り)
車内サービス
クラス 冷房付一等寝台車
冷房付一等/二等合造寝台車
冷房付二等寝台車
冷房付三等寝台車
パントリー車
座席 寝台専用列車(座席車無し)
技術
車両 LHB型客車
Tejas型客車
軌間 1,676 mm
最高速度 130-160 km/h
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ラージダーニー急行(Rajdhani Express, राजधानी एक्सप्रेस)は、インド国鉄が運行する急行列車の一種。クルーズトレインを除いた一般の乗客が乗れる列車としてはインドで最も運賃の高い高級列車の一つである。ラージダニーはヒンディー語首都という意味があり、インドの首都であるとデリー(Delhi)と地方の主要都市(州都が多い)を結ぶことを意味する名前となっている。ラージダーニーはヒンディー語における長音を反映した表記であるが、日本ではこれを反映しないローマ字などの表記をもとにラジダニエクスプレスラージダニエクスプレスラジダーニエクスプレスなどと転写されることも多く表記には揺れがある。

本項では狭義のラージダーニー急行(Rajdhani Express)のほかに、2020年代より運転が始まった新型のテジャス型客車を用いるテジャスラージダーニー急行(Tejas Rajdhani Express)についても記述する。

概要

1969年、デリーと東部の大都市コルカタ(当時のカルカッタ)を結ぶ列車として登場した。デリー側のターミナル駅はニューデリー駅(नई दिल्ली、New Delhi 、国鉄略称NDLS)が多いが、南部の主要都市に向かう列車を中心にハズラト・ニザームッディーン駅(हज़रत निज़ामुद्दीन, Hazrat Nizamuddin、略称HZM)発着のものも多い。2021年より後述の新型Tejas型寝台客車を用いた列車がアナンドビハール駅(Anand Vihar、略称ANVT)発着で設定され、デリー側の3番目のターミナル駅となった。

表定速度(途中停車時間も含めた平均速度)は55㎞/h以上である。このためインド国鉄による急行列車の分類では、一般的な急行列車よりも速くて格上扱いのスーパーファスト級(superfast)の急行列車となっており加算運賃を徴収している。5桁の数字で表される列車番号(train number)もスーパーファスト級を示す12000番台、22000番台もしくは20000番台の番号が割り振られている。かつては4桁表示で2000番台であった。また、COVID-19の流行により)頭の1または2の代わりに0を付けたRajdhani Specialとして定期運転の臨時列車扱いとなっている列車がある。

使用車両・サービス

登場時より機関車牽引の客車列車で運転されている。主要幹線は電化が進みつつありWAP7形機関車などの電気機関車の牽引による区間が増えているが、列車によっては一部にディーゼル機関車牽引も残る。典型的なものでは20両編成程度で運転される。先頭の機関車へのヘッドマーク等の掲出はなく、列車名や列車番号などの情報は客車側面に行先標(サボ)として表示される。

走行距離は一回の運転で1,500㎞から3,000㎞に及ぶ長距離列車であり、夜行寝台列車として運転される場合が多い。このために客車は寝台車でありかつ冷房が完備されている。インドの急行列車では一般的な非冷房の寝台車や座席車は連結しない。寝台車には等級があり一等寝台(二段寝台、通路との仕切りはドア付き個室で定員2名もしくは4名、通路を挟んだサイド寝台なし)、二等寝台(二段寝台、カーテン仕切り、通路を挟んで二段寝台あり)、三等寝台(三段寝台、仕切り無し、通路を挟んでサイドは二段寝台あり)がある。いずれも一区画(一室)は2人から6人での利用で設計されており、1人用の個室寝台のサービスはない。

客車は何れも全長24m級、幅3.2m級で新幹線車両に匹敵する大型客車である。ラージダニー用客車の塗装はICF型の時代より赤色系とされ一般的な急行列車が使う青色系の客車とは区別された。新型客車への置き換えもほかの列車より優先して行われ、2000年代以降従来のICF型客車から新型のLHB型客車への置き換えられた。LHB型客車は2000年代の登場にもかかわらずドアは手動開閉である。2020年代より自動ドアを装備したTejas型寝台客車の投入され旧来のLHB寝台車の置き換えが始まった。新しいTejas型客車は黄色みの強いオレンジ色である。

食堂車は連結されていないものの、食事を調整するパントリー車(pantry car、LHB型客車では車体側面にHOT BUFFET CARなどと表示されている)が編成内に連結されており、車内で温かい食事を摂ることができる。他の列車では食事料金は都度払いであるが、ラージダニー急行の場合は運賃に含まれており追加料金は発生しない。また、乗車時にはウエルカムサービスとして飲料と軽食が配られるなど、各種サービスはライバルとなる国内線航空機を意識したものとなっている。

このほかに電源車荷物車および緩急車の機能を備えた車両が機関車直後と最後尾に連結される。

運行路線

自動ドアを備えた新型客車を使用するTejas Rajdhaniも含めて記載する。Tejasの()は新型客車に更新され改称された年を示す。

行先州 デリー市内始発駅 地方側終点都市および駅名 列車名 列車番号 走行距離 表定速度 運航開始年
アッサム州 ニューデリー駅 Dibrugarh Town Dibrugarh Town Rajdhani (Barauni経由) 12423/12424 2,434 km (1,512 mi) 75 km/h (47 mph) 1996
ニューデリー駅 Dibrugarh Dibrugarh Rajdhani (via Bogibeel Bridge) 20505/20506 2,458 km (1,527 mi) 68 km/h (42 mph) 1999
ニューデリー駅 Dibrugarh Rajdhani Express (via Moranhat) 20503/20504 2,452 km (1,524 mi) 68 km/h (42 mph) 2010
チャッティースガル州 ニューデリー駅 ビラースプル
ジャンクション駅 (国鉄略称BSP)
Bilaspur Rajdhani 12441/12442 1,501 km (933 mi) 74 km/h (46 mph) 2001
ゴア州 ニザムディーン駅 Madgaon Junction Madgaon Rajdhani 22413/22414 2,094 km (1,301 mi) 71 km/h (44 mph) 2015
グジャラート州 ニューデリー駅 アフマダーバード
ジャンクション駅(国鉄略称ADI)
Swarna Jayanti Rajdhani
(別名 Ahmedabad Rajdhani)
12957/12958 934 km (580 mi) 68 km/h (42 mph) 1998
ジャンムー・カシミール州 ニューデリー駅 Jammu Tawi Jammu Tawi Rajdhani 12425/12426 582 km (362 mi) 64 km/h (40 mph) 1994
ジャールカンド州 ニューデリー駅 ラーンチー
ジャンクション駅(国鉄略称RNC)
Ranchi Rajdhani (via Bokaro) 20839/20840 1,305 km (811 mi) 74 km/h (46 mph) 2001
ニューデリー駅 Ranchi Rajdhani (via Daltonganj) 12453/12454 1,341 km (833 mi) 76 km/h (47 mph) 2006
カルナータカ州 ニザムディーン駅 ベンガルール
ケーエスアール駅(別名シティ駅、国鉄略称SBC)
Bengaluru Rajdhani 22691/22692 2,365 km (1,470 mi) 70 km/h (43 mph) 1992
ケーララ州 ニザムディーン駅 ティルヴァナンタプラム
セントラル駅(国鉄略称TVC)
Thiruvananthapuram Rajdhani 12431/12432 3,149 km (1,957 mi) 74 km/h (46 mph) 1993
マハーラーシュトラ州 ニザムディーン駅 ムンバイ
シーエスティー駅(国鉄略称CSMT)
Mumbai CSMT Rajdhani 22221/22222 1,535 km (954 mi) 86 km/h (53 mph) 2019
オリッサ州 ニューデリー駅 ブバネーシュワル
ブバネーシュワル駅 (国鉄略称BBS)
Bhubaneswar Rajdhani (via Adra) 22811/22812 1,723 km (1,071 mi) 76 km/h (47 mph) 1994[1]
ニューデリー駅 Bhubaneswar Rajdhani (via Bokaro) 22823/22824 1,800 km (1,100 mi) 74 km/h (46 mph) 2003[2]
ニューデリー駅 Bhubaneswar Rajdhani (via Rourkela ) 20817/20818 1,914 km (1,189 mi) 71 km/h (44 mph) 2018
タミル・ナードゥ州 ニザムディーン駅 チェンナイ
セントラル駅(国鉄略称MAS)
Chennai Rajdhani 12433/12434 2,175 km (1,351 mi) 77 km/h (48 mph) 1993
テランガーナ州 ニザムディーン駅 シカンダラーバード
ジャンクション駅(国鉄略称SC)
Secunderabad Rajdhani 12437/12438 1,661 km (1,032 mi) 76 km/h (47 mph) 2002
西ベンガル州 ニューデリー駅 コルカタ
ハウラー駅(国鉄略称HWH)
Howrah Rajdhani (ガヤ経由) 12301/12302 1,447 km (899 mi) 85 km/h (53 mph) 1969
ニューデリー駅 Howrah Rajdhani (パトナ経由) 12305/12306 1,530 km (950 mi) 79 km/h (49 mph)
ニューデリー駅 コルカタ
シアルダー駅 (国鉄略称SDAH)
Sealdah Rajdhani 12313/12314 1,453 km (903 mi) 82 km/h (51 mph) 2000
ビハール州 ニューデリー駅 パトナー
ラジェンドラ・ナガル駅 (国鉄略称RJPB)
Rajendra Nagar-New Delhi Tejas Rajdhani Special
(別名 Patna Rajdhani)
12437/12438 1,661 km (1,032 mi) 76 km/h (47 mph) 1996
(2021)
マハーラーシュトラ州 ニューデリー駅 ムンバイ
セントラル駅 (国鉄略称MMCT)
Mumbai Tejas Rajdhani Special 12951/12952 1,387 km (862 mi) 90 km/h (56 mph) 1972
(2021)
ニザムディーン駅 August Kranti Tejas Rajdhani 12953/12954 1,377 km (856 mi) 79 km/h (49 mph) 1992
(2021)
トリプラ州 アナンド・ビハール駅 アガルタラ
アガルタラ駅 (略称AGTL)
Agartala Tejas Rajdhani 20501/20502 2,427 km (1,508 mi) 58 km/h (36 mph) 2017
(2021)

脚注

関連項目

スーパーファスト(superfast)
スーパーファストはインドにおける急行列車(Express, Mail)の内、全区間を通しての表定速度が55㎞/h以上のものを指す。停車駅は少なく他の遅い急行列車に比べて加算運賃が設定されている。superfast express, superfast mail、もしくは略称のS.F.などと呼ばれるが、列車名にはあまり入らず名前を見ただけではわからないことが多い(駅の案内放送等ではスーパーファスト込みの名前で放送することがある)。列車番号に特徴があり、12000番台、22000番台と20000番台がスーパーファストの急行列車に指定される。ラージダニー急行もスーパーファストの一種が特別な名前を持つものである。設定本数が多く、特別な名前を持ち、ラージダニーとの共通部分もあるスーパーファストには以下に挙げるようなものがある。種類、本数ともに2000年代以降拡大傾向にある。
シャターブディー急行(Shatabdi Express)
スーパーファストの一種で各地の都市から200km-700km程度の距離を数時間で結ぶ列車として設定されている。座席は原則座席車で寝台車は連結されず、また全車冷房車で運転される。シャターブディーは「一世紀、百周年」という意味があり、インドの初代首相ジャワハルラール・ネルー(1889-1964)の生誕百周年に近い1988年に運転開始したことに因む。なお、2002年からは非冷房車を一部に連結しその部分の運賃を下げた姉妹列車ジャン・シャターブディー急行(Jan Shatabdi Express)も登場した。
ガリブ・ラス急行(Garib Rath Express)
スーパーファストの一種で2006年に登場。寝台サイズを切り詰め定員を増やした専用の冷房付き寝台車を用いる夜行列車。狭い代わりに運賃を従来の冷房車2/3に抑えているという。寝台車は緑色の黄色の太帯が入った専用客車で、冷房車、サイドベッドも含め3段寝台(同クラスの従来型はサイドは2段寝台)、定員は78人/両に統一されている。
ドゥロント急行 (Duronto Express)
スーパーファストの一種で2009年に運転開始。流れる川と花を描いたという迷彩柄のような専用客車で運転されることが多い。デリー、コルカタ、ムンバイの3大都市間を相互に、もしくはこれらの都市から地方に行く列車が設定されており、2000㎞近くを走るものもある長距離寝台列車。
フムサファール急行(Humsafar Express)
スーパーファストの一種で2016年に登場。ベッド部分やトイレ洗面台部分の改良、車内案内表示装置、読書灯、給湯器や監視カメラの設置などを行い快適性を向上させた改良型LHB客車だけで組成された列車である。中間層の客単価向上を狙っているとされ、水色の外装をした冷房付き三段寝台車(B1)と非冷房三段寝台車(SLEEPER, SL)の2種類だけが登場しこれらだけで編成を組んでいる。運賃は未改良の従来型同クラスに比べ1割程度高い。

外部リンク