マーガレット (Uranus XXIII Margaret) は、天王星 の第23衛星 である。発見されている天王星の不規則衛星 の中では唯一、順行 軌道を持つ衛星 である[ 1] 。
発見と命名
マーガレットは、2003年 8月29日にスコット・S・シェパード とデビッド・C・ジューイット によって、すばる望遠鏡 を用いた観測で発見された[ 6] [ 7] [ 8] 。発見は10月9日に国際天文学連合 および小惑星センター のサーキュラーで公表され、S/2003 U 3 という仮符号 が与えられた[ 6] 。
その後2005年 12月29日に、ウィリアム・シェイクスピア の戯曲『空騒ぎ 』の主人公の侍女に因んで命名され、Uranus XXIII という確定番号が与えられた[ 9] 。
軌道
天王星の不規則衛星の軌道要素、横軸は天王星からの距離、縦軸は軌道傾斜角 である。中心の横線より上が順行 衛星、下が逆行 衛星。マーガレットだけが順行衛星である
マーガレットは天王星の外側を回る不規則衛星 の中で唯一順行 している。右図はマーガレットを含む天王星の不規則衛星の軌道要素を示したものである。点のサイズは衛星の大きさを示している。横軸が天王星からの距離で、黄色の線は近点 と遠点 を結ぶ線であり、線分の長さが軌道離心率 の大きさを表している。縦軸は軌道傾斜角 であり、図の中心に引かれた線より上が順行 の衛星、下が逆行 の衛星である。表の一番上にある衛星がマーガレットであり、マーガレットの特異性をよく表している。また黄色の線分が長いことから、軌道離心率が非常に大きいことも分かる。
マーガレットの軌道傾斜角は 57° であり、これは軌道安定性の限界に近い。天王星の周りでは、軌道傾斜角 i が 60° < i < 140° の中間的な値を持つ衛星は古在メカニズム を介した軌道不安定を起こすため、天王星の衛星でこの間の軌道傾斜角を持った衛星は発見されていない[ 3] 。この不安定領域に衛星があった場合、遠点 における太陽 からの摂動 によって軌道離心率が増加するため、1000万年〜1億年の間に衝突を起こすか天王星系からはじき出されてしまう。マーガレットの近点移動 の周期はおおよそ160万年である[ 4] 。マーガレット自身も遠い将来には天王星系からはじき出されてしまう可能性がある[ 10] 。
2019年 現在のマーガレットの軌道離心率は0.812である[ 11] 。これは太陽系 内の衛星の中で最も大きな値であるが、平均の軌道離心率では海王星の衛星 ネレイド の方が大きい。
出典