マリーナベイ・サンズ (Marina Bay Sands )は、シンガポール のマリーナ・ベイに面した統合型リゾート (IR)である。土地を含め総工費 80 億シンガポールドル で建設され、世界でこれまでにないほど高額なカジノの不動産物件となった[ 1] [ 2] 。マリーナベイ・サンズは2011年 2月17日 に開業。これと同時に7つの著名なシェフによるレストランも開業した。
概要
ラスベガス のカジノリゾート、ラスベガス・サンズ によって開発された。 500 のテーブルと1,600のスロットマシーンが並ぶ、単独としては世界最大のカジノ を中心に、2,561室のホテル 、 12 万平方メートル のコンベンションセンター、7万4千平方メートルのショッピングモール、美術館、シアター、グラスパビリオンなどを含んだ複合リゾートとなっている。タワー1、2、3と3つの超高層ビル(最高部で高さ 200 m 、57階建て)を屋上で連結した構造である。設計はモシェ・サフディ (en ) [ 3] 、建設は韓国の双竜建設[ 4] 。
3棟のホテルは屋上にある1ヘクタールの空中庭園「サンズパーク」(SandsPark)で繋がった形となっており、これはシンガポールを一望できる展望台として観光名所となっている。屋上プール( 150 メートル )もあり、世界一高い場所にあるプール(地上 200 メートル )を謳っている。
スカイパークにあるインフィニティ・プール
レーザーショーの様子
曲がっている部分
内部構造
背景
マリーナベイ・サンズはシンガポールの最初の統合型リゾート(IR)として採用された2つの提案の1つであった。もう一つの提案はリゾート・ワールド・セントーサ であり、この中に家族連れ向けのユニバーサル・スタジオ・シンガポール も含まれている。2つの大規模なリゾートは今後 10 年 間シンガポールの経済と観光客のニーズに応えるものであった。 30 年 の間カジノ運営のライセンスを発行し、更に最初の十年はカジノ運営の独占権を認めた。観光促進への貢献、建築のコンセプトとデザイン、開発のための投資、借款団としての力がそれぞれ入札者への基準として設けられた。
2006年5月27日、ラスベガス・サンズはこのコンペの勝利を宣言した[ 5] 。ラスベガス・サンズは単独でこのライセンス発行の手続きを提出した。元々のライセンスの所有者であったCity Developments Limited (CDL)はこのプロジェクトの15%の投資を提案したが、2回目のコンペでパートナーシップの権利から手を引いた。CDLのCEOである郭令明は以下のように述べている。「CDLがカジノの競売から身を引いたのは複合的な要素によるものであった。所有している多くの会社を期日までに競売の条件を満たす事が難しく、シンガポール政府の要求に応えて一部の会社の機密情報を公開する事を要求された事が不本意であった[ 6] 。」しかし郭はサンズの競売のアドバイザーを務め続けている。
投資
ラスベガス・サンズは、このプロジェクトに 38.5 億シンガポールドル の投資を約束した。この費用には 56 ヘクタール の土地取得に伴う費用は含まれていない[ 7] 。土や鉄などの建築材のコストが上昇し、他の建築プロジェクトや国の政策により、労働力が不足したため、シェルドン・アデルソン は2009年7月に、このプロジェクトの総工費が 80 億シンガポールドル になったことを認めた[ 1] [ 8] 。
ラスベガス・サンズ は、世界 で最も困難な建築プロジェクト、かつ単独としてこれまで建設されたものの中で、最も高額なリゾート施設を手がけていると宣言した[ 9] 。このカジノは毎年少なくとも 10 億ドル の利益をもたらす事が予期されていた[ 10] 。
最初の部分的な開業から2ヶ月後に、カジノは毎日 25000 名 の来訪者が訪れた。シンガポール人とシンガポール永住者は、1度入場するために 100 シンガポールドル を支払うか、 2000 シンガポールドル の年間パスを購入する必要がある[ 11] 。2010年6月にはカジノの来場者が 50 万人 に達した[ 12] 。2012年の第三四半期にはマリーナベイ・サンズの収益はその年の初めからほぼ28%減少した[ 13] 。
経済的な観点から見て、マリーナベイ・サンズは 27 億シンガポールドル を生み出し、2015年のシンガポールのGDPを0.8%引き上げ、 10000 人 の直接的な雇用と 20000 人 の別の産業による雇用を創出した[ 6] 。
デザインと建設
3つの塔は船のデッキから着想された。
2009年8月5日の建設状況
マリーナベイ・サンズはモシェ・サフディ[ 14] [ 15] [ 16] によって設計された。サフディは船のデッキからこのデザインを着想した。マリーナベイ・サンズはカジノに加え、3つのホテルの塔に2,500の部屋とスイーツを有し、 19000 m2 ( 200000 sq ft ) のアート・サイエンス・ミュージアムと 110000 m2 ( 1200 000 sq ft )の 45000 人 が収容できるイベント用スペースがある。ロビーは切れ目なく3つの塔にそれぞれ繋がっている。マリーナベイ・サンズの設計と主要なデザインに変更が加わる事は風水コンサルタントのChong Swan LekとLouisa Ong-Leeによって合意された[ 17] [ 18] 。
このホテルの特徴はスカイパークにある。スカイパークは3エーカー(1.2 ha)の広さがあり、プールと庭園とジョギング用の道がある。北の塔から片持ち梁が突き出しており、3つの全ての塔につながっている。スカイパークの外側は予め別の場所で 14 の鋼鉄の部分に分けられて作られ、その後塔の上で組み立てられた[ 19] 。プールの下には 4 箇所 ほどつなぎ目があり、これらの全てはすべて独特の可動域を持っている。またこのプールは塔の自然な動きに耐えられるように設計されている。可動域は 500 mm ほどである。さらに風が吹いた時、ホテルの塔は時間とともに地面に向かうようになっているため、エンジニアは将来の適合のためにプールの仕組みの下に 500以上 のジャッキの足を埋め込んで建築した。このジャッキシステムの一番重要な点はプールの端のこの機能が適切に動き続けることを担保することである[ 20] 。
3つの塔は下は幅が広いが、上に上がるにつれて幅が狭くなる。それぞれの塔は非対称の2つの脚を持っており、東の脚はもう一方の脚に対して傾いた形で曲がっており、建設の上で、重要な技術的な挑戦となった。建設中には一時的な構造物がこの塔の脚を支える必要があり、リアルタイムで組み立ての過程の継続的な分析と判断のためのモニタリングが要求された。このプロジェクトの構造エンジニアはアラップ社とParsons Brinckerhoff社とMechanical, electrical, and plumbing社によって管理されていた[ 21] 。
開業
ショッピングモールの運河の上のレイン・オクルスはネド・カーンによって設計された。
マリーナベイ・サンズは元々は2009年中の開業を予定していたが[ 8] 、建設費の高騰と、世界金融危機 により段階的な開業を余儀なくされた。最初の部分的な開業は更に遅れて2010年4月27日から行われ、公式な開業は2010年6月23日まで延期された。残りの複合施設はまだ建設中であり、全面開業したのは2011年2月17日のことであった。
2010年4月27日、マリーナベイ・サンズは当初3,4段階に分けたオープンを予定していた。カジノの会議ホールの一部、ショッピングエリア、ホテルの 963 部屋 、イベント広場は15時18分に部分的に開業した[ 22] 。
マリーナベイ・サンズのショッピングモール
Inter-Pacific Bar Association(IPBA) は2010年5月の2日から5日にかけてマリーナベイ・サンズ・コンベンションセンターで初めて会議を行った。しかしこのイベントは設備が伴っておらず、マイクの音が小さく惨憺たる会議となった。その結果としてIPBAはマリーナベイ・サンズに 30 万シンガポールドル の支払いの保留を訴えた[ 23] 。6月にはIPBAは会議が大惨事となったため、この支払の請求は脅迫、強要であると訴訟を行った。[ 23] 8月には内容が未公開の示談が成立した。
2010年6月23日にマリーナベイ・サンズが公式にオープンするのに際し、2日間の祝賀会が行われた。この祝賀会のキャンペーンはスカイパーク、マリーナベイのイベント広場、食事のオプション、バーやクラブのサービス、新たに開いたホテルの部屋などで実施された。最初の日のイベントはスカイパークのガラスでワールド・チャンピオンシップ・クライムが行われた。このイベントは 7 チーム の世界大会を勝ち抜いた 21 名 の一流のロッククライマーによっておこなわれた。また夜のコンサートにトニー・ブラクストン 、タビサ・ノーサー、シルビア・ラトネル、Jacintha Abisheganadenが参加し、 4000 人 の招待客が訪れた。スカイパークは2日目の14時にオープンし[ 9] 、 2000 枚 の成人用チケットが 20 シンガポールドル で売れた[ 24] 。
2010年11月30日に2つのサンズシアターにてリバーダンスの上演が時間通り行われた。これはマリーナベイ・サンズにとって初めての公演であった。2011年2月19日の午前10時に、アートサイエンスミュージアムがオープンした。高い期待を持たれていたライオンキングのミュージカルは2011年3月3日に初舞台が行われた。浮島の別館にルイ・ヴィトンとパンゲアクラブがテナントとして改修を終え、2011年の9月18日、9月22日にそれぞれオープンした。ライオンキングのミュージカルは2011年10月30日の最後の公演まで続けられた。
アトラクション
スカイパークからのシティ・ホール、CBDスカイラインの眺め
マリーナベイサンズは55階の3つの塔があり、この塔は2009年7月に完成した。3つの塔は 1 ヘクタール ほどの屋根によってサンズスカイパークに接続している[ 25] 。展望台からは海岸の向こう側まで景色を楽しむことが出来る[ 26] 。
3つの塔の前にはシアター・ブロックとコンベンションセンターのブロックとカジノのブロックがある。カジノのブロックには1,000の賭博台と 1400 台 のスロットマシーンがある。
ハス の形をしたアートサイエンスミュージアムは、この3つのブロックの隣に建設された。アートサイエンスミュージアムの屋根は開閉可能で、日中は雨水を集めて、屋根から滝を作り、夜は屋根を開けてレーザーショーが行われる。イベント・プラザの前ではワンダフル・ショーという東南アジアで最大のレーザーショーが行われる[ 27] 。2011年2月17日に、アートサイエンスミュージアムはオープンし、ワンダフルのショーも公開された。
インフィニティプールのパノラマ画像
スカイパークは全長 146 m 、高さ 191 m の世界最長[ 28] [ 29] の屋上プールである。
このプールは、 約19 トン のステンレスで出来ており、 1424 m3 の水量を保持できる。スカイパークには屋外レストランの郭文秀のSky on 57、ウルフギャング・パック のSpago、アジア料理のCÉ LA VIが所在し、何百本もの木と植物が植えられており、カンチレバー には展望台からは、 360° のシンガポールの地平線を眺めることができる。スカイパークは保安上の理由から、ホテル宿泊客以外入ることはできない。
ザ・ショップス アット マリーナベイ・サンズは、 93000 ㎡ ほどの店舗面積を持ち、 300以上 の小売店と、フード・アンド・ビバレッジ・アウトレットが入居している。ブティックには、ラルフ・ローレン 、シャネル 、カルティエ 、プラダ 、グッチ 、エルメス 、アルマーニ 、ショパール 、レッドヴァレンティノ、ディオール 、ダンヒル 、ヴァーチュ 、ミュウミュウ、サン・ローラン、サルヴァトーレ・フェラガモ 、モンブラン 、ブランパン 、ヴェラ・ウォン 、エルベレジェが入居している。
運河がショッピングモールの間を流れており、同様の構造は、ラスベガス のベネチアン にも見られる。サンパン が運河に乗り入れており、ショッピングモールの買い物客はこれを利用する事ができる。これはベネチアンのゴンドラ と同様である。またショッピングモール内にはゴードン・ラムゼイ によるブレッド ストリート キッチン、ウルフギャング・パックによるCUT、和久田哲也 によるWaku Ghin、ナンシー・シルバートンによるPIZZERIA MOZZA、デビッド・トムソンによるLong Chim、ダニエル・ブールーによるDB BISTRO & OYSTER BARのセレブリティシェフによるレストランが入居している。
マリーナベイサンズには2つのクリスタル・パビリオンがある。2011年6月には法律上の論争があったにもかかわらず、片方のバビリオンはアヴァロンとパンゲアという2つのナイトクラブに改装された。さらに2つ目のバビリオンは 1900 ㎡ の浮島を加えて、世界最大のルイヴィトンのブティックとなった。この浮島は海中トンネルを通して、ブティックと連結している。バビリオンは両方共2011年のF1世界選手権 のシンガポール市街地コース の直前にオープンした。
サンズ・シアターとグランド・シアターはそれぞれ 1680 席 と 2155 席 あり、ライオンキングの公演は国際的な劇団である、シルク・エロワーズやA.R.ラフマーンの世界ツアーの後半に行われる。ミュージカルのウィキッド が2011年12月7日から期間限定で開演している。劇場の隣には 600 ㎡ ほどの人口アイススケート場が設置されている。
ボクシングが恒例イベントとして行われており、2011年5月5日に始まった時、クリス・ジョンとダウド・ヨルダンの試合が行われた。
モーシェ・サフディはこのリゾートの中にアートパスをデザインした。このアートパスには郑重宾、アントニー・ゴームリー 、ソル・ルウィット を含む 5 人 の芸術家による作品が陳列されている。これらの作品は建物と調和して光、水、風などの自然を感化させる[ 14] [ 15] [ 16] [ 30] 。
交通
MRT
公共バス
97/97e, 106, 133, 502/502A, 518/518A, NR1, NR6
水上タクシー
グランドコプソーンウォーターフロント、ラッフル上陸地、ボートキー、リバーサイドポイント、ロバートソンキーから発着
登場作品
脚注
^ a b "Las Vegas Sands says Singapore casino opening delayed" . Asiaone.com. 8 July 2009. Archived from the original on 2 June 2013. Retrieved 11 November 2017.
^ "Marina Bay Sands set to open 27 April" . Sbr.com.sg. Retrieved 2012-08-10.
^ MdN編集部『一度見たら忘れない奇跡の建物 異彩を放つ世界の名建築100』エムディエヌコーポレーション、2017年、39頁。ISBN 978-4-8443-6644-7 。
^ 双竜建設、シンガポールのランドマーク完工 中央日報 2010年6月24日
^ "While Las Vegas Sands bets on conventions, Harrah's counts on fun factor". TODAYonline. 12 May 2006.
^ a b "Sands' passion, track record will win the bid, says CDL chairman". TODAYonline. 5 April 2006
^ Las Vegas Sands Is Chosen to Build Singapore Casino
^ a b "Marina Bay Sands opening delayed to early next year" . Channel NewsAsia. 8 July 2009. Retrieved 2012-08-10.
^ a b "21 'spidermen' to scale glass facade of MBS" . News.asiaone.com. 22 June 2010. Retrieved 2012-08-10.
^ Bi, Mingxin (29 April 2010). "Singapore bets big on casinos" . Xinhua News Agency.
^ "IR set for 125k daily visitors" . Straits Times . 23 June 2010. Archived from the original on 26 June 2010.
^ "25,000 visit MBS casino daily" . Channel NewsAsia. 23 June 2010.
^ "Singapore casino revenues slow down" . Investvine.com. 2013-01-19. Retrieved 2013-01-19.
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^ a b The Welcoming Hand of Singapore , worldarchitecturenews.com
^ a b Ballinger, Lucy (25 June 2010). "Dazzling new £4bn resort open in Singapore" . Daily Mail . London.
^ "Marina Bay Sands covers its bets" . Relax.com.sg. 18 March 2010. Retrieved 2012-08-10.
^ Marina Bay Sands Moves into Heart of House
^ Hart, Sara (3 January 2011). "Marina Bay Sands" . Architect Magazine .
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^ "Marina Bay Sands" . Marina Bay Sands. 24 April 2010. Retrieved 2010-07-17.
^ a b "Sands Singapore Casino Sued for Conference Mishaps (Update1)" . Bloomberg BusinessWeek . 10 June 2010. Retrieved 2010-07-17.
^ "Channel NewsAsia – Marina Bay Sands SkyPark opens; 2,000 tickets sold" . Channel NewsAsia. 24 June 2010. Retrieved 2010-07-17.
^ The Economist , "Sin galore ", 26 February 2011, p. 72.
^ Observation Deck on Sands Skypark - Marina Bay Sands
^ "MBS launches cutting-edge light and water show" . asiaone. 17 February 2011.
^ [1] , Video: Building the Marina Bay Sands SkyPark Pool.
^ Natare Corporation Archived 14 July 2011 at the Wayback Machine.
^ Marina Bay Sands opens , 27 April 2010, archived from the original on 3 May 2010
ギャラリー
関連項目
参考文献
Reid, Robert (August 2011). "Towering Imagination". Civil Engineering: the Magazine of the ASCE: 50–59. 2008-02-10の記事が保存されており、このプロジェクトの技術的な議論が掲載されている。
外部リンク
座標 : 北緯1度16分57.54秒 東経103度51分30.30秒 / 北緯1.2826500度 東経103.8584167度 / 1.2826500; 103.8584167