ビウエラ=ヴィオラの名が冠される楽器は中世のフィドル fiddle (ビエール Vielle)を祖先に持つ楽器と思われ、ビウエラ(ビウエラ・デ・マーノ)もその系譜の中に属する。ビウエラ Vihuela に関する最初の文献中での記述は、15世紀のアラゴン王国において見られる。16世紀になるとルイス・デ・ミランの1536年の曲集 Libro de música de vihuela de mano intitulado El maestro に始まり、多くのビウエラ用曲集が出版された。歴史文献に「ビウエラ」がしばしば現れることなどからも、スペイン・ポルトガルと、その支配下にあったシチリア、ナポリ、中南米でかなり広く使われたものと思われる。
ルイス・デ・ミランの曲集 El maestro にはビウエラを弾くオルフェウスの挿し絵がある(右図)。絵の周囲の文章は、オルフェウスをビウエラの発明者としてたたえる内容になっている(画像詳細ページ参照)。また、ミゲル・デ・フエンリャーナのビウエラ曲集のタイトルは Orphenica lyra(オルフェウスのリラ[1])となっている。このことから、当時スペイン文化圏ではビウエラはギリシア神話に登場し、音楽の神としばしば混同されるオルフェウスの楽器、リラと同一視されており、重要な楽器と見なされていたことが想像できる。秀逸なレパートリーが数多く残されていることなどからも16世紀にはビウエラが隆盛を極めただろうことが容易に想像できる。