バナメイエビ(学名: Litopenaeus vannamei)は、クルマエビ科に属するエビの1種。東太平洋原産で、食用として広く漁獲・養殖されている。英語名(Whiteleg shrimp)を和訳したシロアシエビともよばれる。
形態
全長は最大230mm、頭胸部長は90mm[1]。成体は水深72m以浅の海洋に、稚エビは河口域に生息する[1]。額角は中くらいの長さで背側に7からの10の鋸歯があり、腹側には2-4の鋸歯がある[1]。
分布
バナメイエビの原産地は東太平洋で、メキシコのソノラ州からペルー北部に至る沿岸である
[1]。年間を通して水温20℃以上の海域にのみ生息する[2]。
漁獲と養殖
20世紀の間、本種はメキシコの近海漁業と遠洋でのトロール漁の双方において重要であった[1]。20世紀末には、養殖業の利用が漁獲を上回った。養殖はパナマで捕獲された個体を使用し、1973年にフロリダで始められた[2]。
ラテンアメリカでは、本種の養殖は水温の上がるエルニーニョ現象に際しては生産高のピークを迎えるが、水温の下がるラニーニャ現象に際しては病気の影響で減少する[2]。
本種の生産高は、ホワイトスポット病(英語版)、タウラ症候群(英語版)、伝染性皮下造血器壊死症(英語版)、バキュロウイルス性中腸腺壊死症[注釈 1]及びビブリオ属感染などの病気に感染しやすいことに制約される[2]。このほか、急性肝膵臓壊死症にも感受性が高く、致死率が高い。淡水を含む低塩分の水、高密度、病気への耐性では比較的すぐれ、養殖方法が確立した1990年代には中国、東南アジアを含む世界中で養殖がおこなわれるようになった[3]。2004年までに世界での本種の生産高は1,116,000 tに達し、ブラックタイガーのそれを上回った[2]。
2010年にはグリーンピース・インターナショナルが本種を「シーフードレッドリスト」(世界中のスーパーマーケットで販売されている魚介類のうち、持続不可能な漁獲法に由来する恐れが高いもののリスト[4])に加えた。グリーンピースによる理由はいくつかの国での広大なマングローブ林の破壊、エビ養殖場(英語版)に供給するための稚エビの乱獲、著しい人権侵害である[4]。
餌は主に甲殻類など。カニや小さめのエビなどが多く使われている。
日本での扱い
日本ではクルマエビの近縁種の1つとして重視されている。東南アジアのエビ養殖業者が、養殖の対象をブラックタイガーからバナメイエビに変更するにつれ、日本での取扱量も増加している。日本ではむき身に加工して「むきえび」として流通することがある。
2013年に、日本各地のホテルやレストランでバナメイエビを、同じクルマエビ科の「シバエビ」と表示して調理し、メニューに掲載していたことが、食材偽装問題時に発覚した[5]。
2020年10月に、沖縄県大宜味村の養殖場でタイから輸入したバナメイエビ約10万尾が大量死する事件が起き、検査の結果急性肝膵臓壊死症 (AHPND) に感染していたことが判明した。日本で AHPND の発生が判明したのはこれが初めてであり、感染エビの処分や養殖場の消毒が行われた[6]。
参照
- 注釈
- ^ baculoviral midgut gland necrosis
関連項目
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外部リンク