『ストームウォッチ〜北海油田の謎』(原題:Stormwatch)は、イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、ジェスロ・タルが1979年に発表した12作目のスタジオ・アルバム。『神秘の森〜ピブロック組曲』(1977年)、『逞しい馬』(1978年)に続く「フォークロック三部作」の最終作と位置付けられている[12]。
背景
ジョン・グラスコックは健康上の問題により本作のレコーディングに全面参加できず、「オリオン星座」、「フライング・ダッチマン」、「エレジー」の3曲でベースを弾くにとどまり、残りの曲ではイアン・アンダーソンがベースも兼任した[13]。アンダーソンは後年、「このレコードには、バリー(バリモア・バーロウ)が残した最高の名演が幾らか入っている」「私がベースを弾いたことで、私とバリーの間には、それまでになく強い音楽的な絆が生まれた」「もちろん、ジョンが健康な状態でレコーディングに全面参加できれば、もっと嬉しかったんだけどね」とコメントしている[12]。なお、最終的にグラスコックの体調は回復せず、本作のリリース後に死去しており[13]、バンドは後任の正式ベーシストとして、フェアポート・コンヴェンションのメンバーとしても知られるデイヴ・ペグを迎えた[14]。しかし、バーロウは親友であったグラスコックの死に打ちひしがれ、本作に伴うツアーの終了後にバンドを脱退した[12]。
アンダーソンは、イギリスやノルウェーなどが開発を進めていた北海油田に関心を抱いており、本作に収録された「北海油田」だけでなく、「ブロードフォード・バザール」(未発表音源集『ナイトキャップ-アンリリースド・マスターズ1973年〜1991年-』が初出)という曲でも北海油田を歌っている[15]。「ダン・リンギル」には、テームズTVの気象予報士フランシス・ウィルソンがスポークン・ワードで参加しており、そのフレーズは本作のジャケットにも印刷された[15]。「エレジー」は、デヴィッド・パーマーが自身の父に捧げたインストゥルメンタルである[13]。
反響・評価
全英アルバムチャートでは4週トップ100入りするが、最高位は27位に終わり、バンドのスタジオ・アルバムとしては『ロックンロールにゃ老だけど死ぬにはチョイと若すぎる』(1976年)以来3年ぶりに、全英トップ20入りを逃す結果となった[3]。アメリカのBillboard 200では、1979年11月10日に最高22位を記録した[2]。
ノルウェーのアルバム・チャートでは2週連続で15位を記録し、合計12週トップ40入りした[1]。ドイツのアルバム・チャートでは、オリジナル・リリース当時は8週トップ50入りし、最高28位を記録した[5]。
Bruce Ederはオールミュージックにおいて5点満点中2点を付け「ここに来てアンダーソンの閃きは枯渇したようで、彼が書いた歌詞の題材は、環境問題に対する懸念や、闇雲な社会批評にまで及んでいる」「インストゥルメンタルの"Warm Sporran"を別とすれば、アンダーソンのフォーク的な作曲能力の源泉も枯れてしまったことが示されている」と評している[16]。
リイシュー
2004年発売のリマスターCDには、4曲のボーナス・トラックが追加された[13]。「ア・スティッチ・イン・タイム」は1978年11月リリースのシングルA面曲、「クロスワード」と「ケルピー」は本作のためのセッションで録音されたアウトテイクで、「キング・ヘンリーズ・マドリガル」は新ベーシストのデイヴ・ペグが参加した初音源に当たり、1979年11月にEP『ホーム』のカップリング曲として発表された[15]。
2019年に発売された40周年記念エディション『Stormwatch: 40th Anniversary Force 10 Edition』は、4枚のCDと2枚のDVD-Audioから成る内容で、CD1はオリジナル盤のスティーヴン・ウィルソン・リミックス、CD2は未発表曲やアウトテイクなどを含むボーナス・ディスク、CD3とCD4は1980年3月6日に行われたオランダ公演のライブ音源を収録している[17]。このヴァージョンは、ドイツのアルバム・チャートではオリジナル・リリース時を上回る8位に達した[5]。
収録曲
特記なき楽曲はイアン・アンダーソン作。5. 10.はインストゥルメンタル。
- 北海油田 "North Sea Oil" – 3:12
- オリオン星座 "Orion" – 3:58
- ホーム "Home" – 2:46
- ダーク・エイジズ "Dark Ages" – 9:13
- 防寒具スポラン "Warm Sporran" – 3:33
- サムシングス・オン・ザ・ムーヴ "Something's on the Move" – 4:27
- 年老いた妖怪達 "Old Ghosts" – 4:23
- ダン・リンギル "Dun Ringill" – 2:41
- フライング・ダッチマン "Flying Dutchman" – 7:46
- エレジー "Elegy" (David Palmer) – 3:38
2004年リマスターCDボーナス・トラック
- ア・スティッチ・イン・タイム "A Stitch in Time" – 3:40
- クロスワード "Crossword" – 3:38
- ケルピー "Kelpie" – 3:37
- キング・ヘンリーズ・マドリガル "King Henry's Madrigal" (Traditional) – 2:59
参加ミュージシャン
アディショナル・パーソネル
脚注
注釈
- ^ フランス系をルーツとし姓の表記は“Barre”のため、日本では“バレ”と読まれることも多いが、イギリス人であり“バー”と発音するのが正しい[18]。
出典
外部リンク
|
---|
イアン・アンダーソン | フローリアン・オパーレ | ジョン・オハラ | デヴィッド・グーディア | スコット・ハモンド ミック・エイブラハムズ | グレン・コーニック | クライヴ・バンカー | トニー・アイオミ | マーティン・バレ | ジョン・エヴァン | ジェフリー・ハモンド | バリモア・バーロウ | ジョン・グラスコック | デヴィッド・パーマー | デイヴ・ペグ | マーク・クレイニー | エディ・ジョブソン | ジェリー・コンウェイ | ピーター=ジョン・ヴェテッシ | ドーン・ペリー | ドン・エイリー | マーティン・アルコック | アンドリュー・ギディングス | ジョナサン・ノイス |
スタジオ・アルバム | |
---|
ライヴ・アルバム | |
---|
コンピレーション・アルバム | |
---|
関連項目 | |
---|