「ジ・エンド 」(The End )は、ビートルズ の楽曲である。1969年9月に発売された11作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『アビイ・ロード 』に収録された。レノン=マッカートニー 名義となっているが、ポール・マッカートニー によって書かれた楽曲。アルバム『アビイ・ロード』のB面の特徴であるメドレー「ザ・ロング・ワン」(The Long One )の8曲目にあたる楽曲で、メドレー全体を締めくくる楽曲となっている。また、ビートルズのレコードで唯一、リンゴ・スター がドラムソロを披露した楽曲ともなっている。
背景・曲の構成
本作の歌詞が刻まれた盾
スターのドラムソロをはじめとした各人の楽器のソロパートが含まれている。スターは「ソロを面白いと思ったことは一度もない」と語るなど、ドラムソロを嫌っていて拒否していたが、ジョージ・マーティン の説得により演奏した。このことについてスターは「ジョージ・マーティンに説得された。僕が叩いている間、彼がずっと数を数えていた。時間を稼がなくちゃならなかったから。それで僕は妙ちくりんなタイミングで切り上げることになった。長さが13小節だったからね。とにかく僕はソロを叩いたし、これはあくまで特例だ。やり終えた今は満足してるけどね」と語っている。このドラムソロは、アイアン・バタフライ の楽曲「ガダ・ダ・ヴィダ (英語版 ) 」におけるロン・ブッシー (英語版 ) のドラミングを模したもの。
ドラムソロが終わると、マッカートニー、ジョージ・ハリスン 、ジョン・レノン (演奏順)によりギターソロリレーが始まり、各人2小節のギターソロを3回演奏している。このセクションは、3人がそれぞれのセクションを演奏することを、ハリスンが提案した[ 8] 。
各人のソロパートの後に、「And, in the end, the love you take/ Is equal to the love you make. (結局、あなたが得る愛は、あなたが与える愛(の量)に等しい)」というメッセージが歌われるという構成になっている。マッカートニーは、「メドレーをちょっと意味のある連句で締めたかったから、シェイクスピア を追求して書いた」とコメントし、マッカートニーに多い物語調の歌詞を嫌っていたレノンは「見ろ、アイツだって書こうと思えばこういう哲学的な歌詞が書けるんだ」と皮肉半分に称賛した[ 注 1] 。
レコーディング
「ジ・エンド」のレコーディングは、1969年7月23日にEMIレコーディング・スタジオ のスタジオ3で開始された。テープ・ボックスには「Ending」と表記されていた。8トラック・レコーダーのトラック1と2にスターのドラム、トラック3にレノンのギター 、トラック4にハリスンのギター、トラック5にマッカートニーのベース が録音された。記録上はメドレー「ザ・ロング・ワン」のメイン・セクションが7テイクから録音されたことになっているが、テープにはテイク7の後に22から33までの番号がふられたアウトテイク が収録されている。このことから、33回ものリハーサル・テイクののちに、テープが巻き戻されて改めてカウントが開始されたと推測できる。
7月30日にメドレー「ザ・ロング・ワン」に含まれる楽曲のレコーディングが完了したため、曲順を決めるための仮編集が行われたが、この段階ではボーカル やギターソロ、オーケストラは含まれていなかった。試作段階のメドレーは、2019年に発売された『アビイ・ロード (スーパー・デラックス・エディション) 』のCD3に収録された。
8月5日に曲頭のボーカル、7日にボーカル(「Love you 」と繰り替えすパート)とギターソロ、アルバムのカバー写真の撮影が行なわれた8月8日にベース とドラムが追加された。その後8月15日にオーケストラ 、18日にエンディング部分のピアノ とボーカルが追加されて完成となった。
また、スターのドラムソロには当初タンバリン とギターの音が入っていたが、ミキシング時にカットされた。このカットされた音が含まれたアレンジは、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3 』に収録された。こちらでは、前述のカットされた音が含まれている他に、ギターソロやオーケストラが強調され、曲の最後には「ア・デイ・イン・ザ・ライフ 」のピアノ コードが加えられている。
クレジット
※出典
その他
2006年に発売されたリミックス・アルバム『LOVE 』に収録されている「ゲット・バック 」には、ドラムソロとポールの2回目のギターソロとジョンの最後のギターソロが使用されている。
マッカートニーは『Get Back Tour』で披露して以降、コンサートでのアンコールのエンディングナンバーとして演奏されており、『ポール・マッカートニー・ライブ!! 』『ポール・マッカートニー・ライブ・ハイライツ!! 』『バック・イン・ザ・U.S. -ライブ2002 』『バック・イン・ザ・ワールド 』等のライブ・アルバムにライブ音源が収録されている。また、2012年に開催されたロンドンオリンピック の開会式 で、フィナーレにポール・マッカートニーが「ヘイ・ジュード 」と共に演奏した[ 17] [ 18] 。
ビータリカ はメタリカ の「ジ・エンド・オブ・ザ・ライン」をカバーした際に、「ジ・エンド」のメロディを使用している[ 19] 。
脚注
注釈
^ この時、レノンは同フレーズを引用して称賛しているが、「And in the end, the love you get is equal to the love you give 」と間違ってしまっている。
出典
参考文献
Anthology 3 (booklet). The Beatles . London: Apple Records . 1996. 34451。
The Beatles (2000). The Beatles Anthology . San Francisco: Chronicle Books. ISBN 0-8118-2684-8
The Beatles - Complete Scores . Milwaukee: Hal Leonard Publishing Corporation. (1993). ISBN 0-7935-1832-6
ハウレット, ケヴィン (2019). アビイ・ロード (スーパー・デラックス・エディション) (ブックレット). アップル・レコード .
“Interview Transcript ”. Larry King Show (2007年6月26日). 2019年9月15日 閲覧。
Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions . New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-84413-828-3
Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now . New York: Henry Holt & Company. ISBN 0-8050-5249-6 . https://archive.org/details/paulmccartneyman00mile
Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono . New York: St. Martin's Press. ISBN 0-312-25464-4 . https://archive.org/details/allwearesayingla00lenn
Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966-1970 . New York, NY: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9
Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four . Santa Barbara, CA: ABC-CLIO. ISBN 978-0-313-39171-2
外部リンク