ゲオスミン

ゲオスミン
識別情報
CAS登録番号 19700-21-1 チェック
PubChem 29746
ChemSpider 27642 チェック
日化辞番号 J3.785K
KEGG C16286
ChEBI
特性
化学式 C12H22O
モル質量 182.3 g mol−1
沸点

270-271 °C, 543-544 K, 518-520 °F

危険性
引火点 104 °C (219 °F)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ゲオスミン (geosmin) は降雨のあとの地面のにおいを持つ有機化合物の一種で、デカリン誘導体のアルコールジェオスミンとも呼ばれる。光学異性体が存在し、天然のものは (−) 体である。IUPAC名は (4S,4aS,8aR)-4,8a-ジメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-4a-オール (4S,4aS,8aR)-4,8a-dimethyl-1,2,3,4,5,6,7,8-octahydronaphthalen-4a-ol である。

語は「大地の臭い」を意味し、テーブルビートのもつ土のような味や下水道から発生するカビ臭の原因物質でもある。ヒトのはゲオスミンに対して敏感であり、5ppt程度の濃度でもそのにおいを感じることができる。

1965年放線菌の代謝産物として単離された[1]。その後、1968年に全立体異性体全合成によって立体配置が決定された[2]。両鏡像異性体の合成は1989年に達成されている[3]

藍藻や放線菌、特にストレプトマイセス属などの微生物によって産生され、それらが死んだときに放出される。ゲオスミンはセスキテルペンの前駆体であるファルネシル二リン酸から生合成される[4]

ゲオスミンは雨によって土中から大気中に拡散し、独特の雨上がりのにおいのもとになる。水の供給を表流水に頼っている地域では、ゲオスミンを作り出す微生物が土中から水源に放出されることで水がまずくなる、という現象が定期的におこる。 また、日本では湖の植物プランクトン由来のゲオスミンが、湖を水源とする水道水カビ臭をつけることで知られており、ゲオスミンの濃度が高くなる時期には活性炭を使用して脱臭が行われることがある[5][6]

また、コイナマズなど水底に住む淡水魚が持つ泥臭いにおいのもとでもある。

参考文献

  1. ^ Gerber, N. N.; Lechvalier, H. A. (1965). “Geosmin, an Earthy-Smelling Substance Isolated from Actinomycetes”. Appl. Environ. Microbiol. 13 (6): 935-938. 
  2. ^ Marshall, J. A.; Hochstetler, A. R. (1968). “The Synthesis of (±)-Geosmin and the Other 1,10-Dimethyl-9-decalol Isomers”. J. Org. Chem. 33 (6): 2593-2595. 
  3. ^ Revial, G. (1989). “Asymmetric Michael-type Alkylation of Chiral Imines. Enantioselective Syntheses of (−)-Geosmin and Two Other Related Natural Terpenes, as well as enant-(+)-Geosmin”. Tetrahedron Lett. 30 (31): 4121–4124. 
  4. ^ Jiang, J.; He, X.; Cane, D. E. (2006). “Geosmin Biosynthesis. Streptomyces coelicolor Germacradienol/Germacrene D Synthase Converts Farnesyl Diphosphate to Geosmin”. J. Am. Chem. Soc. 128 (25): 8128-8129. 
  5. ^ 京都市の水道水にカビ臭、消臭追いつかず 琵琶湖でプランクトン急増”. 朝日新聞DIGITAL (2024年8月29日). 2024年11月1日閲覧。
  6. ^ 脱臭処理のための粉末活性炭注入のお知らせ”. 京都市水道局 (2023年7月21日). 2024年11月1日閲覧。

関連項目