ケブラーの構造(太線:モノマー 単位、点線:水素結合 )
ケブラー (Kevlar) とはアラミド の登録商標 である。1965年 に化学者でデュポン 社に勤めていたステファニー・クオレク によって発明された。1970年 代初期に商業的に使用され始めた。
正式名称はポリパラフェニレン テレフタルアミド (英 : poly-paraphenylene terephthalamide )。
長所・短所
長所
引張り強度が高い
「引張り強度」が高く、同じ重さの鋼鉄 と比べて5倍の引張り強度を持つ。
ケブラーはp-フェニレンジアミン とテレフタル酸 クロリドの重合 によって得られ、分子 構造が剛直で直鎖状の骨格を持っている。
ケブラーの強度は、周囲のポリマー鎖との、カルボニル基 と水素 間の水素結合 や、ベンゼン環 のπ結合 の部分的な重なり(π-π相互作用 )による。
ケブラーには、ケブラー、ケブラー29、ケブラー49の3種類があるが、なかでもケブラー49はすべてのアラミド繊維 の中で最高の引っ張り強度を持つと考えられている。
高耐熱
高温に強い。
有機溶剤に溶けない
また、ケブラーは結晶性のポリマー であり、一般の有機溶媒に溶けず、溶融もしない。
そのため成形が困難なポリマーであり、濃硫酸 に溶解 することで成形していることも大きな特徴である。
ケブラーの短所
紫外線 (UV)にさらされると分解する。他の素材と比べて、普通の屋外環境に弱い[1] 。(そのため、UVを遮断するための特別な対策を講じないと、アウトドア 用途で中・長期に使うことはできない。)
アルカリ性 の環境に置かれたり、塩素 にさらされても分解する。
(引張り強度は高いが)圧縮力には弱い[1] 。
(簡単には切れないので)ケブラー繊維もケブラー製の布も、切断するにはかなり特殊な切断道具を必要とする[1] 。また、ひとたび積層して繊維強化プラスチックにすると、普通のドリル刃では穴をあけることすらできなくなり、かなり特殊なドリル刃を用意する必要がある[1] 。つまり実際の "ものづくり" の現場では かなり使いづらい。
用途
繊維強化プラスチック の補強、飛行機 、船体 、自転車 などに使われる。(ただし、長所・短所で説明したように、UV遮断措置を特に講じるか、あるいはUVにさらされない箇所でしか、中長期的には使えない。)
ヨット レース で使用するセイル (帆 )は、勝負に勝とうとして特に強い力をかけ、布地が裂けるアクシデントがしばしば発生し、レースの勝敗に影響するので、セイル表面にケブラー繊維を縫い付けるような加工・補強をしてセイルの引張強度を高めることがある(ただしUVに晒されるので特殊な加工でもしない限り中・長期使用には向かない。日常使いのセイルにはケブラーはほとんど使われない。)
警備業界・警察・軍隊などでは、ボディアーマー や防刃ベスト などに使用されている。
楽器のボンゴ の素材としてもケブラーが使われている。伝統的な木材では、サルサ プレーヤーがボンゴを床に落としてプレーするスタイルや地元のクラブや最大のアリーナやスタジアムでのプレーの厳しさに耐えられないため、ラテンパーカッション (英語版 ) (LP) 社がケブラーを使ったボンゴを製造している[2] 。LP社はケブラーを「鋼鉄の二倍の強度」 (which is twice as strong as steel.)[3] としている。LP社は同じデザインのコンガ にはケブラーを使用していないため、この材料を使うのはボンゴ特有の高負荷な使用条件にある。
脚注
関連項目