群論におけるケイリーの定理(ケイリーのていり、Cayley's theorem)とは、すべての群G は対称群の部分群に同型であるとする定理である[1]。アーサー・ケイリーにちなんで名付けられた。より具体的には、G は対称群 Sym(G) (その元が G の集合の置換である群)の部分群と同型である。明示的に表すと
各 g ∈ G について定義される、x ∈ G をその左から g を掛けた gx に移す写像 ℓg : G → G は G の置換である。
g ∈ G を ℓg に移す写像 G → Sym(G) は単射準同型なので、G から Sym(G) の部分群への同型写像を定義する。
準同型写像 G → Sym(G) は集合 G に対する G の左並進作用から生じるものとしても理解できる[2]。
G が有限のとき Sym(G) も有限である。この場合のケイリーの定理の証明は、G が n 次の有限群であれば G は標準的な対称群 Sn の部分群と同型であることから示される。しかし、G はより小さな対称群 Sm (m < n) の部分群と同型である可能性もある。例えば、位数 6 の群 G = S3 は S6 の部分群と同型であるだけでなく、(自明に)S3 の部分群とも同型である[3]。与えられた群 G が埋め込まれる最小次数対称群を見つける問題はかなり難しい[4][5]。
集合 A の置換とは A から A への全単射関数である。A のすべての置換の集合は写像の合成のもとで群をなし、A 上の対称群と呼ばれ、Sym(A) と書かれる[13]。 特に A を群 G の台集合とすると、Sym(G) と表記される対称群が生成される。
証明
g を演算 * を持つ群 G の元であるとし、 fg(x) = g * x で定義される関数 fg : G → G を考える。逆元の存在からこの関数は逆関数 fg-1 をもつ。よって g による乗算は全単射関数とみなせる。したがって fg は G の置換であり、Sym(G) の元でもある。
集合 K = {fg | g ∈ G} は G と同型な Sym(G) の部分群である。これを証明する最も早い方法は任意の g ∈ G に対して T(g) = fg となる関数 T : G → Sym(G) を考えることである。T は群準同型である。なぜなら任意の x ∈ G について
(ここで · は Sym(G) の合成を表す)、したがって
準同型写像 T は単射である。なぜなら T(g) = idG(Sym(G) の単位元)よりのすべての x ∈ G に対して g * x = x が成り立ち、x を G の単位元 e とすると g = g * e = e となり、つまり核は自明であるため。あるいは g * x = g' * x から g = g' となるため T は単射である(すべての群は簡約的であるため)。
^Johnson, D. L. (1971). “Minimal Permutation Representations of Finite Groups”. American Journal of Mathematics93 (4): 857–866. doi:10.2307/2373739. JSTOR2373739.
^Grechkoseeva, M. A. (2003). “On Minimal Permutation Representations of Classical Simple Groups”. Siberian Mathematical Journal44 (3): 443–462. doi:10.1023/A:1023860730624.