クロルフェニラミン (英 : chlorpheniramine、chlorphenamine )は、第一世代のアルキルアミン系ヒスタミン受容体 拮抗薬 の一つである。H1 受容体に競合的に拮抗することにより炎症 、気道分泌を抑制する[1] [2] 。鎮静作用は他の第一世代 抗ヒスタミン薬 [3] に比べて弱い。油状。
クロルフェニラミンはフェニラミン系薬剤の一つとされる。同系統の他の薬剤に、フェニラミン (英語版 ) 、フルオロフェニラミン 、 d- クロルフェニラミン(英語版 ) 、ブロモフェニラミン (英語版 ) 、d- ブロモフェニラミン(英語版 ) 、デスクロルフェニラミン , トリプロリジン (英語版 ) 、ヨードフェニラミン がある。ハロゲン化アルキルアミン系抗ヒスタミン薬は全て光学活性中心 を持つ。クロルフェニラミンはラセミ体 であり、d- クロルフェニラミンは右旋性 の立体異性体 を分離した製剤である。
抗コリン作用 のため、アルツハイマー型認知症 や他の認知症を、クロルフェニラミンや他の第一世代抗ヒスタミン薬が増悪させるため、継続して用いることは推奨されない。[4] 。
セロトニン作動性作用
ヒスタミンH1 受容体 (英語版 ) (HRH1 )の阻害薬 であると同時に、クロルフェニラミンは セロトニン再取り込み阻害薬 (英語版 ) (SRI)としての効果も持つ[5] 。同系統の抗ヒスタミン薬であるブロモフェニラミン (英語版 ) は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)の一つであるジメリジン (英語版 ) の発見につながった。しかしながらクロルフェニラミンのSRIとしての臨床的裏付けは限られている[6] 。
フィッシャー344ラットとBrown Norwayラットの第一世代混血ラットを用いた実験で、クロルフェニラミンを脳室 内投与すると、恐怖関連行動の減少と迷路実験の成績向上が見られた。またクロルフェニラミンの長期投与で加齢に伴う運動機能低下を低減した[7] 。
他剤との併用
クロルフェニラミンはしばしばアレルギー 治療のため、抗ヒスタミン作用 と充血除去作用 の両方を有するフェニルプロパノールアミン (英語版 ) と併用される。しかし米国では若年女性の脳卒中リスクを増加させるとの研究が公表されて以降は使用できない。クロルフェニラミンにはその様なリスクはない。
クロルフェニラミンと麻薬の一種であるヒドロコドン との合剤が米国で承認されており、成人および6歳以上の小児の咳嗽 ならびにアレルギーおよび感冒 に関する上気道の諸症状緩和に用いられている[8] 。この合剤は徐放性で効果が12時間持続するが、一般の麻薬性鎮咳薬の効果持続時間は4〜6時間である。
クロルフェニラミン・ジヒドロコデイン 速放シロップが市販されている。抗ヒスタミン効果はアレルギーや咳嗽を伴う風邪に有用である。ジヒドロコデインも麻薬性鎮咳薬の一つであり、クロルフェニラミンは鎮咳作用、鎮痛作用等を増強している。世界各地で、鎮咳薬、風邪薬としてクロルフェニラミン・ジヒドロコデイン合剤が用いられている。
クロルフェニラミンと鎮咳薬のデキストロメトルファン の合剤もある。
副作用
d- クロルフェニラミンマレイン酸塩(下記「マレイン酸塩」節参照)の副作用の内、重大なものとされているのは、ショック、痙攣、錯乱、再生不良性貧血 、無顆粒球症 である(いずれも頻度不明)[9] 。
5%以上(または頻度不明)に発現する副作用は、発疹 、光線過敏症 、鎮静、神経過敏、頭痛、焦燥感、複視、眠気、不眠、めまい、耳鳴、前庭障害、多幸症、情緒不安、ヒステリー、振戦、神経炎、協調異常、感覚異常、霧視、口渇、胸焼け、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛、便秘、下痢、頻尿、排尿困難、尿閉、低血圧 、心悸亢進 、頻脈 、期外収縮 、鼻および気道の乾燥、気管分泌液の粘性化、喘鳴、鼻閉、溶血性貧血、AST(GOT) 上昇、ALT(GPT) 上昇、Al-P 上昇、悪寒、発汗異常、疲労感、胸痛、月経異常である[9] 。
マレイン酸塩
日本薬局方 第一部収載品で一般名はクロルフェニラミンマレイン酸塩 [注 1] である。日本で承認されている(dl- , d- )クロルフェニラミン製剤はマレイン酸塩のみである。
IUPAC名 N -[(RS)-3-(4-Chlorophenyl)-3-pyridine-2-ylpropyl]-N ,N -dimethylamine monomaleate。CAS登録番号 [113-92-8]。外観・性状は白色の微細な結晶で、においはなく、味は苦い。酢酸 (100%) に極めて溶けやすく、水またはメタノール に溶けやすく、エタノール (99.5%) にやや溶けやすい。また、ジエチルエーテル にほとんど溶けない。融点 は130〜135℃。
妊婦 に処方可能な抗ヒスタミン剤として第一選択薬である。
商品名としてポララミン錠2mg(高田製薬 )等、延べ47製剤(配合剤を含む)[10] があり、ラセミ体とd- 体の製剤が混在している。
現在徐放剤として販売されているのはd-クロルフェニラミンマレイン酸塩徐放錠6mg(旧名称[11] :ネオマレルミンTR)(武田薬品工業 販売)のみである。
徐放錠の効能・効果
徐放錠の用法・用量
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩として、通常成人1回6mgを1日2回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
脚注
注釈
^ 第14改正日本薬局方まではマレイン酸クロルフェニラミンであった
出典
^ 獣医学大辞典編集委員会『明解獣医学辞典』チクサン出版社、1991年。ISBN 4885006104 。
^ 伊藤勝昭他『新獣医薬理学 第二版』近代出版、2004年。ISBN 4874021018 。
^ 一般にH1 受容体拮抗薬は抗ヒスタミン薬と呼ばれる。
^ Gray, Shelly L.; Anderson, Melissa L.; Dublin, Sascha; Hanlon, Joseph T.; Hubbard, Rebecca; Walker, Rod; Yu, Onchee; Crane, Paul K. et al. (January 26, 2015). “Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia: A Prospective Cohort Study” . JAMA Intern. Med. 175 (3): 401–7. doi :10.1001/jamainternmed.2014.7663 . PMC 4358759 . PMID 25621434 . http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2091745 2015年1月27日 閲覧。 .
^ Carlsson, A.; Linqvist M. (1969). “Central and peripheral monoaminergic membrane-pump blockade by some addictive analgesics and antihistamines”. Journal of Pharmacy and Pharmacology 21 (7): 460–464. doi :10.1111/j.2042-7158.1969.tb08287.x . PMID 4390069 .
^ Hellbom, E. (2006). “Chlorpheniramine, selective serotonin-reuptake inhibitors (SSRIs) and over-the-counter (OTC) treatment”. Medical Hypotheses 66 (4): 689–690. doi :10.1016/j.mehy.2005.12.006 . PMID 16413139 .
^ Hasenöhrl, R. U.; Weth, K.; Huston, J. P. (1999). “Intraventricular infusion of the histamine H1 receptor antagonist chlorpheniramine improves maze performance and has anxiolytic-like effects in aged hybrid Fischer 344×Brown Norway rats”. Experimental Brain Research 128 (4): 435–40. doi :10.1007/s002210050866 . PMID 10541737 .
^ “Tussionex Pennkinetic (hydrocodone polistirex and chlorpheniramine polistirex) Extended-Release Suspension ” (PDF). UCB (2011年). 2016年4月1日 閲覧。
^ a b “ポララミン散1%/ポララミン錠2mg 添付文書 ” (2015年9月). 2016年4月1日 閲覧。
^ クロルフェニラミンマレイン酸塩 検索結果 PMDA
^ https://www.med.takeda-teva.com/di-net/kaitei/20181214hanbaimeihenkou_7.pdf
参考文献
関連項目