カスパーゼ-1

CASP1
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1BMQ, 1IBC, 1ICE, 1RWK, 1RWM, 1RWN, 1RWO, 1RWP, 1RWV, 1RWW, 1RWX, 1SC1, 1SC3, 1SC4, 2FQQ, 2H48, 2H4W, 2H4Y, 2H51, 2H54, 2HBQ, 2HBR, 2HBY, 2HBZ, 3D6F, 3D6H, 3D6M, 3E4C, 3NS7, 5FNA

識別子
記号CASP1, ICE, IL1BC, P45, caspase 1
外部IDOMIM: 147678 MGI: 96544 HomoloGene: 133272 GeneCards: CASP1
EC番号3.4.22.36
遺伝子の位置 (ヒト)
11番染色体 (ヒト)
染色体11番染色体 (ヒト)[1]
11番染色体 (ヒト)
CASP1遺伝子の位置
CASP1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点105,025,397 bp[1]
終点105,035,250 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
9番染色体 (マウス)
染色体9番染色体 (マウス)[2]
9番染色体 (マウス)
CASP1遺伝子の位置
CASP1遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点5,298,508 bp[2]
終点5,307,290 bp[2]
遺伝子オントロジー
分子機能 cysteine-type peptidase activity
endopeptidase activity
ペプチダーゼ活性
血漿タンパク結合
cysteine-type endopeptidase activator activity involved in apoptotic process
加水分解酵素活性
cysteine-type endopeptidase activity involved in execution phase of apoptosis
cysteine-type endopeptidase activity involved in apoptotic process
キナーゼ結合
cysteine-type endopeptidase activity
CARD domain binding
identical protein binding
cysteine-type endopeptidase activity involved in apoptotic signaling pathway
細胞の構成要素 NLRP3 inflammasome complex
細胞質
細胞質基質
NLRP1 inflammasome complex
細胞外領域
AIM2 inflammasome complex
ミトコンドリア
IPAF inflammasome complex
protease inhibitor complex
高分子複合体
生物学的プロセス 有機物への細胞応答
response to ATP
低酸素症への反応
細菌への反応
membrane hyperpolarization
ピロトーシス
protein processing
toxin transport
タンパク質分解
cellular response to mechanical stimulus
リポ多糖への反応
regulation of autophagy
interleukin-1 beta production
mitochondrial depolarization
programmed necrotic cell death
シグナル伝達
アポトーシス
regulation of apoptotic process
activation of cysteine-type endopeptidase activity involved in apoptotic process
regulation of inflammatory response
execution phase of apoptosis
cellular response to lipopolysaccharide
cellular response to interferon-gamma
protein autoprocessing
positive regulation of cysteine-type endopeptidase activity involved in apoptotic process
positive regulation of tumor necrosis factor-mediated signaling pathway
positive regulation of I-kappaB kinase/NF-kappaB signaling
サイトカイン媒介シグナル伝達経路
cellular response to cytokine stimulus
apoptotic signaling pathway
positive regulation of interleukin-1 beta production
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)
NM_001223
NM_001257118
NM_001257119
NM_033292
NM_033293

NM_033294
NM_033295

NM_009807

RefSeq
(タンパク質)
NP_001214
NP_001244047
NP_001244048
NP_150634
NP_150635

NP_150636
NP_150637

NP_033937

場所
(UCSC)
Chr 11: 105.03 – 105.04 MbChr 11: 5.3 – 5.31 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
カスパーゼ-1酵素前駆体

カスパーゼ-1: caspase-1)は進化的に保存された酵素であり、炎症サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-18(IL-18)前駆体のタンパク質分解による切断や、ピロトーシス英語版の誘導因子であるガスダーミンD英語版の活性型成熟ペプチドへの切断を行う[5][6][7]。インターロイキン-1β変換酵素(interleukin-1β converting enzyme、ICE)としても知られる。カスパーゼ-1は、炎症応答の開始因子として細胞性免疫に中心的な役割を果たす。カスパーゼ-1はインフラマソーム複合体の形成を介して活性化されると、IL-1βとIL-18の2つの炎症性サイトカインの切断・活性化によって炎症促進応答を開始するとともに、ガスダーミンDの切断によって溶解性プログラム細胞死経路であるピロトーシスを開始する[8]。カスパーゼ-1によって活性化された2つの炎症性サイトカインは細胞から分泌され、さらに近隣の細胞での炎症応答を誘導する[9]

細胞での発現

カスパーゼ-1は動物界の多くの真核生物で進化的に保存されている。炎症免疫応答に関与しているため、肝臓腎臓脾臓血液好中球)などの免疫器官で高度に発現している[10][11]。感染後、炎症応答を増幅するポジティブフィードバック機構によってカスパーゼ-1の発現は上昇する[11]

構造

カスパーゼ-1は酵素前駆体として産生され、その後20 kDa(p20)と10 kDa(p10)のサブユニットへと切断されて活性型酵素となる。活性型カスパーゼ-1はp20とp10からなるヘテロ二量体からなり、p20とp10の双方にまたがって存在する活性部位を持つ触媒ドメインや[12]CARDドメイン英語版(caspase activation and recruitment domain)を含む。インフラマソームの形成の際、カスパーゼ-1はASC英語版NLRC4英語版など他のCARD含有タンパク質とCARD-CARD間相互作用を行う[7][13]

調節

阻害型カスパーゼ-1。p10(青)とp20(緑)。
インフラマソームの構造の一例。構造の中心に触媒ドメインが存在し、外側にセンサードメインが存在する。

活性化

CARD-CARD間相互作用によるリング構造の形成

カスパーゼ-1は通常は生理的に不活性な酵素前駆体として存在し、インフラマソーム複合体へと組み立てられた際にp10とp20サブユニットへと自己切断を行うことで自己活性化を行う[14][15]。インフラマソーム複合体は、NLR英語版ファミリーやAIM-1(Absent in Melanoma)様受容体などのシグナル特異的センサータンパク質、ASCなどのアダプタータンパク質、そしてカスパーゼ(この場合はカスパーゼ-1)の三量体からなるリング状の複合体である。NLRP1英語版やNLRC4のようにシグナルセンサータンパク質自体がCARDを持っている場合には、直接的なCARD-CARD間相互作用が行われて複合体にアダプタータンパク質が存在しない場合もある。さまざまなセンサータンパク質とアダプタータンパク質が存在し、それらの組み合わせによって特定のシグナルに対するインフラマソームの応答が決定される。その結果、細胞は受けた危険信号の深刻さに応じて、さまざまな程度の炎症応答を起こすことが可能となる[16][17]

阻害

CARD only protein(COP)はその名が示す通り、CARDドメインのみを持ち、触媒活性を持たないタンパク質である。インフラマソームの形成にはCARD-CARD間相互作用が重要であるため、多くのCOPはカスパーゼの活性化の阻害因子として機能することが知られている。カスパーゼ-1の場合、特異的COP(ICEBERG、COP1英語版(ICE/Pseudo-ICE)、INCA(Inhibitory Card))の遺伝子は全てカスパーゼ-1をコードするCASP1遺伝子座の近傍に位置し、遺伝子重複とその後の触媒ドメインの欠失によって生じたものであると考えられている。これらは全てCARD-CARD間相互作用によってインフラマソームと相互作用するが、これらが阻害機能を発揮する機構や阻害の効率性はそれぞれ異なる[15][18][19]

例えば、ICEBERGはカスパーゼ-1のフィラメント形成の核となり、フィラメントに取り込まれるが、インフラマソームの活性化を阻害する能力は持っていない。カスパーゼ-1と他の重要なCARD含有タンパク質との相互作用を阻害することでカスパーゼ-1の活性化を抑制すると考えられている[15][18][19]

一方INCAは、カスパーゼ-1のCARDドメインのオリゴマーにキャップをし、インフラマソームフィラメントへのさらなる多量体化を防ぐことでインフラマソームの組み立てを直接阻害する[13][18][19][20]

同様に一部のPOP(Pyrin only protein)も、インフラマソームの形成に関与するPyrinドメイン間相互作用を遮断することでインフラマソームの活性化を阻害し、カスパーゼ-1の活性化を調節することが知られているが、その正確な機構は解明されていない[19][21]

阻害剤

機能

タンパク質分解

活性化されたカスパーゼ-1はIL-1β前駆体とIL-18前駆体をタンパク質分解によって切断し、活性型のIL-1βとIL-18を形成する。活性型となったサイトカインは下流の炎症応答を引き起こす。また、カスパーゼ-1はガスダーミンDを活性型へ切断し、ピロトーシスを引き起こす[13]

炎症応答

サイトカインは成熟すると下流のシグナル伝達イベントを開始し、炎症促進応答を誘導するとともに、抗ウイルス遺伝子の発現を活性化する。応答の速度、特異性、種類は、受けたシグナルとシグナルを受けたセンサータンパク質の双方に依存している。インフラマソームによって認識されるシグナルには、ウイルス由来の二本鎖RNA、尿素フリーラジカル、細胞の危険と関係した他のシグナルや他の免疫応答経路の副産物などがある[24]

成熟型サイトカイン自体には小胞体-ゴルジ分泌経路への移行に必要な選別配列は含まれておらず、そのため一般的な経路で細胞から分泌されるわけではない。また、これらの炎症性サイトカインの放出はピロトーシスによる細胞の破裂に依存したものではなく、実際には能動的な過程であると考えられているが、この仮説を支持する証拠と支持しない証拠の双方が得られている。多くの細胞種において、ピロトーシスの徴候が全くないにもかかわらずサイトカインが分泌されているという事実は、この仮説を支持している[17][25]。しかし一部の実験では、ガスダーミンDの機能喪失変異体では、サイトカインの切断は正常に行われるが分泌能力がないことが示されており、実際には何らかの形でピロトーシスが分泌に必要である可能性が示唆されている[26]

ピロトーシス応答

炎症応答後、活性化されたカスパーゼ-1は受けたシグナルや、シグナルを受けたインフラマソームのセンサードメインタンパク質に依存して、細胞溶解型の細胞死であるピロトーシスを引き起こすことがある。ピロトーシスが完全な炎症応答に必要かどうかは明らかではないが、ピロトーシスが起こる前には炎症応答が完全に必要である[17]。ピロトーシスの誘導のためにカスパーゼ-1はガスダーミンDを切断するが、それが直接ピロトーシスを引き起こすのか、または何らかのシグナル伝達カスケードを介しているのか、その正確な機構は明らかではない[17]

他の役割

カスパーゼ-1は壊死を誘導することも示されており、さまざまな発生段階で機能している可能性もある。マウスの同様のタンパク質の研究からはハンチントン病の病因に関与していることが示唆されている。選択的スプライシングによって、遺伝子からは5種類の異なるアイソフォームをコードする転写産物が生じる[27]。近年の研究からは、HIVによるCD4陽性T細胞の細胞死と炎症の促進にカスパーゼ-1が関与していることが示唆されている。これらはHIVによる疾患のAIDSへの進行を推進する2つの特徴的なイベントである[28][29][30]。またカスパーゼ-1の活性は、細菌[31]免疫複合体英語版[32]貪食後のリソソームの酸性化にも関与していることが示唆されている。

出典

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関連項目

外部リンク

  • ペプチダーゼとその阻害因子に関するMEROPSオンラインデータベース: C14.001

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