イタチ科 (イタチか、Mustelidae)は、哺乳綱 食肉目 に分類される科 。
長くほっそりとした体つきで、短い四肢をしている。他のネコ目の動物と異なる特徴として、全ての足指に爪のある5本の指をもつ点が挙げられる。非常に鋭い歯をもつ。肛門 の近くに臭腺 をもち、なわばり の主張などに用いている。
体の大きさは種によって大きく異なる。手のひらに乗るようなイイズナ (ネコ目中最小の種)から、イヌ と同程度の体格をもつラッコ やクズリ にまで至る。
主に地上に住むイタチ 、地中に深い巣穴を掘るアナグマ 、樹上性のテン 、水生のカワウソ やラッコ など、多様な生活様式をもつ。このため、異なるイタチ科の動物同士が、異なるニッチ を分け合うことで、同じ地域に生息している例がしばしば見られる。
分類
Law et al. (2018)[ 5] による分子系統樹
以前はスカンクアナグマ属などを含めたアナグマ亜科・テン属などを含めたイタチ亜科・カワウソ亜科・スカンク亜科(スカンク科 に分割)・ラーテル亜科で本科を構成する説もあった[ 3] 。核遺伝子による分子系統解析では、以前のイタチ亜科は側系統・アナグマ亜科は多系統という結果が得られている[ 6] 。
以下の分類はSato (2016)[ 7] 、和名は主として川田ら (2018)[ 2] に従う。
属間の系統 [ 5]
日本の種
日本では汎存種 としてイイズナ ・オコジョ ・クロテン ・シベリアイタチ (自然分布は対馬のみ)・ラッコ 、固有種 としてアナグマ(ニホンアナグマ )・ニホンイタチ ・ニホンテン(テン )が分布する[ 12] 。また、朝鮮半島のシベリアイタチが本州に、北米のミンク (アメリカミンク)が北海道および本州に移入分布する[ 12] 。かつてはニホンカワウソ とされるカワウソ類も生息していたが、1980年頃までには絶滅した[ 12] 。一方、長崎県対馬においてユーラシアカワウソ の少数個体の生息が確認されている[ 13] 。
出典
^ W. Christopher Wozencraft (2005). “Order Carnivora” . In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.). Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.). Johns Hopkins University Press. pp. 532-628. https://www.departments.bucknell.edu/biology/resources/msw3/browse.asp?id=14001075
^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志「世界哺乳類標準和名目録 」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
^ a b c d e 斉藤勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人「イタチ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2(食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、22-46頁。
^ a b Pat Morris and Amy-Jane Beer「イタチ科」鈴木聡訳『知られざる動物の世界 8 小型肉食獣のなかま』本川雅治監訳、朝倉書店、2013年、26-29頁。
^ a b Chris J. Law, Graham J. Slater, and Rita S. Mehta (2018), “Lineage Diversity and Size Disparity in Musteloidea: Testing Patterns of Adaptive Radiation Using Molecular and Fossil-Based Methods” , Systematic Biology , Volume 67, Issue 1, Pages 127–144.
^ 佐藤淳「食肉目及び齧歯目哺乳類を対象とした進化遺伝学的研究 」『哺乳類科学』第52巻 2号、日本哺乳類学会、2012年、253-255頁。
^ Jun J. Sato (2016). “Chapter 1: The Systematics and Taxonomy of the World's Badger Species – A Review”. In Gilbert Proulx and Emmanuel Do Linh San (eds.). Badgers: systematics, biology, conservation and research techniques . Alpha Wildlife Publications. pp. 1-30
^ 佐藤淳・石田浩太朗「日本産テン類の系統地理学的研究 」『タクサ:日本動物分類学会誌』第32巻、日本動物分類学会、2012年、13-19頁。
^ Klaus-Peter Koepfli, Kerry A Deere, Graham J Slater, Colleen Begg, Keith Begg, Lon Grassman, Mauro Lucherini, Geraldine Veron, and Robert K Wayne (2008), “Multigene phylogeny of the Mustelidae: Resolving relationships, tempo and biogeographic history of a mammalian adaptive radiation” , BMC Biology , Volume 6, No. 10.
^ a b c 佐藤淳「第1章 起源と進化」、小池伸介・佐藤淳・佐々木基樹・江成広斗 著『哺乳類学』東京大学出版会、2022年、11-30頁。
^ Patterson, Bruce D., et al. "On the nomenclature of the American clade of weasels (Carnivora: Mustelidae)." Journal of Animal Diversity 3.2 (2021): 1-8.
^ a b c 増田隆一「序章 食肉類のなかの哺乳類学」、増田隆一 編『日本の食肉類―生態系の頂点に立つ哺乳類』東京大学出版会、2018年、1-20頁。
^ 環境省『平成30年度の長崎県対馬におけるカワウソの調査結果について 』(プレスリリース)2019年6月4日。https://www.env.go.jp/press/106863.html 。2020年1月28日 閲覧 。
外部リンク
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